経法学部研究紹介_2020_2021_プレス品質
19/30

18総合法律学科総合法律学科利益相反性の高い企業買収を効率的に規律づけるためには、どうすればよいのか?権力はなぜ統制されなければならないのかを学ぶ 私の研究分野は、会社をめぐる利害関係者(経営者、株主、債権者)の間に生じる利益衝突について規律する会社法です。その中でも、上場会社の完全子会社化をはじめとする、買収者と対象会社の株主の利益が大きく衝突する組織再編や企業買収の場面に関心を持っています。 私の研究では、諸外国の法ルールと、隣接諸科学の知見をもとに、制定法(上場規則などのソフト・ローも含みます)、裁判所、企業買収の当事会社の間の効率的な役割分担のあり方を探求しています。こうした視点からの分析は、法ルールとクリエイティブな活動の関係性を検討することでもあり、その他の場面にも応用できると考えています。 立憲民主政に依拠する国家の仕組みについて研究しています。立憲民主政とは、基本的人権が平等に保障されるための政治の仕組みです。この仕組みは、古くは古代ギリシャ・ローマ時代に淵源をもち、17世紀~18世紀のイギリス、アメリカ合衆国、フランスにおける「近代市民革命」によって実現されました。 この仕組みが、日本に本格的に導入されたのは、1946年制定の現行日本国憲法によってです。日本国憲法の特徴は、徹底した平和主義です。日本国における立憲民主政の展開において、平和主義の果たした役割は無視できないと考えています。 会社法は、主に、株式会社の設立、運営に関するルールを規律するものであり、その良し悪しが日本企業の業績に直結することもあります。そのため、会社法の研究では、会社関係者の利益を保護することと、効率的な会社経営を阻害しないことという、2つの要請に応えられる仕組みを常に考えなければなりません。もっとも、これらの要請は相反することも多く、両者をうまく調整したルールを形成・発展させることが、この研究分野における最大の課題の1つといえるでしょう。 近年では、こうした課題の克服のために、経済学、統計学などの手法が頻繁に利用されています。初学者に対するハードルは高まる一方ですが、その分だけ、ほかの法分野とは一味違ったおもしろさがあります。 会社法のルールは、自分で起業する、どこかの会社役員に就任するなどの特別な事情がなければ、日常生活で意識されるものではありません。しかし、それを勉強する過程で養われる、多角的な視点で物事を分析する能力は、大学卒業後の進路を問わず、きっと役立つはずです。 権力者は、憲法を遵守することによって、権力を真に国民のために使用することが求められます。そのような「善き統治」を実現するのが憲法の役割だというのが、今のところのわたしの研究成果です。 しかし、仕組みが存在するだけでは、そのような社会は実現しません。憲法の仕組みを実際に動かす人が存在しなければなりません。 憲法を実現する主体は、第一に、権力に批判的に対峙する市民です。次に、市民が選挙で選ぶ国会議員は、行政権を批判的に統制する役割があります。また、法によって紛争を解決する裁判官も、行政権、立法権の違法な活動を抑制するという役目をもっています。メディアは、権力を批判的に監視することによって、国民の知る権利を保障し、立憲民主主義社会の発展に寄与します。 公務員は、憲法の想定する「善き統治」の実現にはかかせない存在です。経法学部には、公務員志望者が多いですが、憲法をしっかりと学び、国民と住民のニーズにこたえられる公務員になってほしいと願っています。 次の問題についても、これまでに検討したことがあります。いずれも簡単な検討にとどまっており、本格的な検討が将来の課題です。■ いわゆるインデックス・ファンドによるスチュワードシップ活  動に対する法的規律のあり方■ 有価証券報告書の虚偽記載等を理由とする取締役の責任追及 (課徴金との関係も含む) イギリス憲法と日本国憲法を研究対象としています。特に、議院内閣制の憲法構造について、日本とイギリスの比較研究をおこなっています。また、成文憲法をもつ日本と不文憲法のイギリスという観点からの比較研究もおこなっています。同時に、憲法を支える政治哲学として、共和主義という考え方に関心があります。最近は、イギリスの研究者との国際交流にも力をいれており、2018年にリバプール大学で、2019年にエジンバラ大学で、報告をおこないました。利益相反性の高い企業買収を規律するための仕組みを検討する際の視点(イメージ)市民向けの講演活動にも力をいれている。須坂市豊洲地域公民館での「出前講座」の様子。寺前 慎太郎 准教授成澤 孝人 教授同志社大学法学部卒業、同大学院法学研究科博士前期課程修了(修士〔法学〕)、同博士後期課程退学。2015年4月より信州大学講師、2020年10月より現職。個人ウェブサイトhttps://sites.google.com/site/steramae3/早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。津市立三重短期大学講師、助教授、信州大学大学院法曹法務研究科准教授、教授を経て現職。研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像研究に関するその他の情報主な研究事例

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る