経法学部研究紹介_2020_2021_プレス品質
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16総合法律学科総合法律学科個人と国家の関係を考える契約関係の柔軟性を確保することで様々な変化に対応 憲法を専攻しています。憲法とは、国家権力がどのように組織されるか、誰によってどのように行使されるかを定める国家の基本となるルールです。憲法の中には、基本的人権が定められています。そのような基本的人権の中でも「教育を受ける権利」を中心に研究しています。「教育を受ける権利」は、未熟な存在である子どもが個人として人格を確立するためにも、個人が民主政治に参加することによって民主主義社会が存続していくためにも必要です。 このような「教育を受ける権利」をどのように考えるべきかを素材として、個人と国家の関係を考察しています。 民法、特に契約法と呼ばれる分野の研究を行っています。私人(一般市民や企業のこと)と私人とが契約を通じて一定の取決めを行ったところ、その取決めの実現過程で何かしらの問題を生じた場合に、その問題をどのように解決すべきでしょうか。契約法が扱うのは、こうした問題です。 契約法は、様々な問題を扱う法分野ですが、特に関心をもって取組んできたテーマとして、①当事者が契約目的不到達を理由に契約を離脱できるのはどのような場合か、②企業と個人とが企業の作成した約款により契約をした場合に契約内容の公平さをどのように保つべきか、③サービス提供契約の履行過程をどのように規律すべきか、等があります。 憲法は生活からかけ離れているもの、という感じがするかもしれません。実際には、憲法は最高法規として、あらゆる法分野に関係をもっています。憲法からは、刑事法にも、民事法にも、行政法にも通じる道が開かれており、そのような意味で総合的な法分野であるということができます。したがって、憲法学の研究には、他の法分野の研究成果を積極的に取り入れる必要があります。 教育の面においては、憲法に関する判例の分析を中心とした演習を行っています。判例の分析は理論と実務の対話という側面を持っています。理論に関心をもつ研究者と実際の裁判に携わる実務家が対話をするためには、学説理論と裁判実務が共有している部分と、共有していない部分を明らかにした上で、共有している部分があることの意味、共有していない部分があることの意味を考察することが必要です。演習を通してこうした考察を行うことは、みずからの思考を鍛える訓練となるので、公務員になろうとするときにも、民間企業に就職しようとするときにも必ず役に立ちます。 これまで、契約というと、契約締結時の合意によりほぼ全てが確定される契約がイメージされてきました。しかし、サービス提供契約の重要性が高まる中で、最近の契約法では、契約時におよそ全ての事項を確定しなければならないわけではなく、むしろサービス提供過程において提供すべきサービスの内容をいかに具体的に特定していくかに関心が集まるようになってきております。 実際に、内閣府の公表する資料によれば、平成12年以降、産業別GDP構成比の7割以上はサービスの提供を扱う産業(第三次産業)が占めるようになっており、サービスの提供に関する契約は現代社会において非常に重要なものとなっています。サービスの提供過程を適切に規律する枠組みを築くことで、私達の社会の健全な発展に貢献することができるように思います。 卒業生の進路は、主に、公務員、金融機関、その他のサービス業です。法曹を目指して進学した卒業生もおります。特に民間企業への就職者は、就職先にあわせて卒業論文のテーマを決めるケースが多く見られます。 教育は私たちにとって必要なものですが、教育を施すには、柔軟性が高い子どもの時期から始めるのが良いと考えられます。しかし、子どもは未熟であるので、ひとりで学ぶことは困難です。そこで、子どもは、自分に必要な教育を施すように、周りの大人に要求することができると考えられるようになりました。こうして「教育を受ける権利」が認められるようになったのです。こうした「教育を受ける権利」を諸外国の法制度と比較しながら研究しています。 これまでにサービス提供契約の分野では弁護士や税理士といった専門家との委任契約において専門家はどの程度の裁量を有するのかといった問題を検討してきました。サービス提供契約以外では、約款による契約をいかに規律すべきかという問題に興味があります。約款の中に契約内容を一方的に変更することを可能にする条項が置かれることがありますが、そうした変更条項はいかなる範囲で効力を有するのかという問題について研究しております。最高法規としての憲法と法律・命令(政令など)の関係日本国憲法98条1項は、「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と定めています。役務提供者に対する指図や、変更条項、事情変更の原則を通じて柔軟性のある契約理論の構築を目指すことをイメージした図赤川 理 准教授栗田 晶 准教授東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得満期退学、首都大学東京助手・助教、信州大学経済学部准教授を経て現職。慶應義塾大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院法学研究科前期博士課程修了、後期博士課程単位取得退学。信州大学経済学部専任講師、准教授、信州大学大学院法曹法務研究科准教授を経て現職。研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例主な研究事例憲法法律命令(政令など)

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