経法学部研究紹介_2020_2021_プレス品質
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14応用経済学科お金という切り口から国の政策(=財政・金融政策)を考える 「財政・金融政策全般」を研究しています。特に、金融制度改革やITの進展を背景としたフィンテック(=Finance+Technology)が金融システムに与える影響などを研究しています。我が国財政(予算額)は社会保障関係予算を中心に大幅に増加し、今や、債務残高はGDP(国内総生産)の2倍を超え、財政健全化が喫緊の課題となっています。また、金融市場についても少子高齢化、低成長を背景に低金利の時代に入り、従来の預金を集めてお金を貸して利鞘を稼ぐというビジネスモデルが崩れ、金融機関の経営は悪化し続けています。このように、財政・金融政策ともに手詰まり状態になり、将来が見えにくくなっています。 財務省・金融庁等に33年間勤務した経験を踏まえ、財政・金融政策の現状や課題を検証し、政策提言を目指しています。 財政政策・金融政策は我が国の進むべき道を決めます。財政(予算)の場合、限られた財源(収入)の中で、各施策の間の優先順位を付けていくことが必要です。この優先順位を考え、決めていくために必要となる基本的な考え方が身に付くようになります。また、お金という商品を取り扱う金融政策は景気を左右し、企業活動に大きな影響を与えますので、その効果を知ることは経済の先行きを読むことに通じます。 教育では、実務を模擬的に体験する科目(財務省の協力により自らが政策を企画し、それに基づき予算折衝を行う政策企画実習、関東信越国税局の協力により税務調査や差押え業務等の税務行政を行う税務実習、金融機関の協力により個人・企業向け融資を行うビジネス実習など)を担当しています。学生の時に講義で学んだことが社会に出てどのように役立つかを先取りして体験し、求められる能力がどのようなものか、分かるようになります。 この結果、受講生の卒業後の進路は、公務員や金融機関を中心に希望する職種に就職しています。著書では、1998年金融システム改革法以降の20年間に施行された規制を基に規制判断DIを策定し、規制緩和から規制強化へ、業界保護から顧客保護への流れを示しています。財務省の協力を得た政策企画実習主計局主査に対してオンラインを通じて模擬的に予算要求を行う。「素晴らしい政策なので予算を付けて!でも、財源は…?」山沖 義和 教授経法学部長総合人文社会科学研究科長1982年慶応義塾大学経済学部卒業。大蔵省(現・財務省)入省、金融庁等を経て、2009から3年間、信州大学に出向。2015年財務省退官後、経済学部教授、2017年経法学部長に就任。2020年総合人文社会科学研究科長に就任。研究の未来と卒業後の将来像応用経済学科データとの付き合い方をゆっくりじっくり考えています 私の専門の「計量経済学」と呼ばれる分野は、ミクロ経済学やマクロ経済学の経済理論と統計学の境界分野で、理論の仮定・結果などを現実の経済データ(GDP、金利、株価など)を用いて分析・評価することを主たる関心としています。計量経済学の分野の中で、私の研究対象は時間に依存するデータ(時系列データ)です。例えば、ニュースで見かける求人倍率・失業率は時系列データに含まれ、日々多くの時系列データに囲まれていることがわかります。私の研究は経済データから「どのような意味を?」、「どこまで引き出すことが出来るか?」に関心があり、この問題を解き明かすための統計理論の開発・研究を行っています。  近年、経済データなどのエビデンスに基づいた議論を展開することが推奨されています。思い込みなどの主観的な判断を回避するために歓迎されるべき方向性だと思います。しかし、統計理論はデータにより得られる知見には限界があることも示しています。(例えば、右のグラフのように、ゲーム内に出現するデータを考えてみれば、データを生み出すプログラムが存在することはゲームなので自明ですが、どのようなプログラムなのか観測されたデータからわかることには理論上限界があります。) 個人的には、データの分析結果に振り回されることなく、データとのある程度適切な距離感・付き合い方を少しでも提案出来ればよいかと思っています。  卒業後に関してですが、データ分析能力を持った人に対する需要は多いのに対して、確率論・統計理論の習得が難しいせいか満足に人材を育成出来ていないように思われます。このような状況ですので、確率論・統計理論をしっかり学んだ学生に対しては民間部門・官公庁での様々な分野での活躍の場があるように思います。 GDPや金利などの経済時系列データに応用可能な確率理論の研究を行っています。特に、データ分析を行う前にモデルの構造に関する情報を極力仮定しないノンパラメトリック統計理論に関心があります。 また、近年では莫大な数のデータを扱う高次元統計理論・ビッグデータ解析に関する研究も行っています。ソーシャルゲームに登場するキャラクターの重さと高さをプロットしたものです。データの背後に右上がりの直線関係があることがわかります。矢部 竜太 准教授一橋大学大学院経済学研究科(経済学博士)、日本学術振興会特別研究員PDを経て現職。研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例

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