経法学部研究紹介_2020_2021_プレス品質
12/30

11応用経済学科応用経済学科ファミリービジネスの事業承継と新たな価値創造の仕組みを探求高次元データ・確率過程の統計的解析手法の発展に貢献する 近年、企業統治のあり方の変遷を表す典型例であることや、トヨタ自動車のように好業績の企業が存在すること、さらには長期存続企業が多いことなどからファミリービジネスの経営活動に注目が集まっています(親子喧嘩が原因で育てた企業をダメにした例もありますが)。 私は、ファミリービジネスを対象とした研究を一つの柱としています。これまでは、上場企業を対象として、競争力を高めながらファミリーが経営権を維持できた理由を紐解こうとしてきました。事業承継を企業内部だけの問題と捉えず、業界の仕組みとその変化を踏まえ分析しています。 今後は地域に根付いたファミリービジネスを対象とし、固有の文化的・制度的要因が企業の存続と革新のプロセスにどのような影響を与えているのか(与えてきたのか)について調査を始めようと考えています。 数理統計学、特に時間などに依存して変動するデータを取り扱う「確率過程の統計解析」及び、高次元データを取り扱う「高次元統計学」を専門に研究しています。数理ファイナンスなどで現れる時系列データの挙動を推測するための理論研究や、高次元データから重要な情報を選択するための手法を、「本質的に必要な情報は少ないはずである」というスパース性と呼ばれる性質に着目して考案する研究に取り組んでいます。提案手法の良さは、データの個数が多くなったときの振る舞いを数学的に導出することで検証します。実データ解析への応用を目指し、コンピュータを用いた数値計算に取り組むことも研究活動の一部です。 近年、上記研究と並行して社会の課題をビジネスを通じて解決しようとするソーシャル・ビジネスや発達障害を持つ企業家を対象とした研究をはじめました。 これらで共通するテーマは、価値の創造であり、前者では社会的価値の創造の仕組みに着目しています。後者では仕組みに加え、症状が起業や事業発展のプロセスに正の効果をもたらしていると考え調査を進めています。 これら研究で得た知見は教育、特に演習で活かしていきたいと考えています。具体的には、学生と一緒に数多くのビジネスの仕組みを知り、そこから新たな仕組みを提案したり、実践したりといった活動を行っていこうと思います。 「学ぶ」の語源は「真似ぶ」であるとの説があります。社会に出れば、新たな事業を展開したり、経営資源の新たな活用方法を見つけ出したりすることが必要となります。誰も見たこともない新しい仕組みをつくることは難しいことです。これまで学んだ既存の仕組みを真似ながら新たな価値をつくりだす。このような力を涵養したいと思います。 数理統計学は数学を基盤とした学問です。本格的に基礎理論を理解するためには微積分学、線型代数学や確率論などを必要とします。勉強には時間がかかり、難しいと感じる人も多いようです。しかし、統計学のよく知られた手法の中にはAI、機械学習に通ずるものもあるので、統計学の勉強を通して最先端の技術の理論的背景の一端を見ることができるかもしれません。また、近年は数値計算ソフトウェアが普及しており、多少のプログラミング技術を身に付けることで様々なデータ解析を実際に行うことができます。数学的な勉強に苦手意識があるという人も、実際にコンピュータでデータ解析を行いながら統計学的な手法や機械学習で使われている計算手法などの実用的なスキルを身に付けることが可能です。 データから知りたい情報を推測・予測し、意思決定に役立てるための方法を提示する統計学の勉強を通して、分野を問わず、様々な問題を考えることができるようになると考えています。●医薬品業を対象としたファミリービジネスの研究 藤野義和(2015)「同族による経営の維持と終焉の論理:医薬品産業における戦略変化の検討を通して」『Venture Review』第 25 号、31-46 頁。●発達障害をもつ企業家の共同研究 江島由裕・藤野義和(2019)「発達障害とアントレプレナーシップ」『Venture Review』第33号、25-39頁。●これまでの実践例を図にしたもの前任校で関わった社会問題の解決を企図した卒業記念品プロジェクトの仕組み。現在も後任の先生指導のもと継続されています。数理ファイナンスなどで広く用いられる確率過程のモデルの様々なパス。時点ごとの観測に基づいて挙動を推測することができる。藤野 義和 准教授藤森 洸 講師2009年に滋賀大学大学院博士前期課程入学。2016年に同大学院博士後期課程終了(経営学博士)。2016年に九州国際大学特任准教授(翌年准教授)を経て、2020年10月より現職。2015年早稲田大学基幹理工学部卒業。2019年同大学院基幹理工学研究科博士後期課程修了(博士(理学))。同年より早稲田大学基幹理工学部数学科講師を経て2020年より現職。研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例1.高次元のデータを共変量として含む確率過程の統計モデルに対する推測手法の研究。2.空間データを取り扱うための点過程の統計モデルに対する推測問題の研究。3.計数時系列の統計モデルにおける条件付き分散に着目した検定問題の研究。主な研究事例

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る