経法学部研究紹介_2020_2021_プレス品質
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10応用経済学科変化する「大学」を研究する 社会の大きな変化の中での「大学」の機能を研究しています。 今日、日本の高校卒業者の6割近くが大学に進学し、大学教育は学校教育と職業とを結ぶ中核として、様々な機能が求められるようになりました。また、AIや生命医療などの科学の進展やグローバル化などの中、研究を担う大学の機能が社会経済の成長のエンジンとしても期待されています。 一方で、大学を取り巻く環境は、若年人口の減少や厳しい財政状況など、様々な変化の渦中にあります。 それぞれに個性を持った大学が、今後の若年人口の動向や産業・就業構造などの変化の中で、どうすれば持続的に発展し、これからの社会に生きる人材と研究の知を輩出し続けられるかがテーマです。 大学の使命は教育、研究、社会貢献であるといわれていますが、その比重の置き方は大学によって異なり、分野、規模、構造も、社会に果たす役割も、大学、或いは学部や学科ごとに様々です。そして、大学に対する社会の要請・期待が多様化しながら高まる中で、各大学は緩やかに機能別に分化していくものと考えられています。 大学や学部の構造を分析するとともに、国内外の様々な大学の取組を見ながら、これからの社会の中で大学に求められる多様な機能はどのようなもので、それを支えるシステムはいかにあるべきか、政策としても活かしうる提案をしていきたいと考えています。 また、大学で学ぶ学生の出口である産業・就業構造などの今後の動向を考えることで、大学で学ぶ学生の将来のビジョンを明確にする助けになればと考えています。若者を取り巻く社会の変化と大学教育の関係(イメージ)大学の3つの使命樋口 聰 教授      副学長、副理事1995年東京大学経済学部卒業、文部省入省、文部科学省大学改革推進室長、官房企画官、日本学術振興会総務兼経営企画部長を経て現職。研究の未来と卒業後の将来像応用経済学科法律が変われば⼈々の⾏動は変わるのか?ルールや制度の設計の仕⽅を考えてみる 経済学では、ルールや制度の設計の仕方によって、人々の行動がどのように変化するかを考えることが、大きな研究テーマの一つです。たとえば、飲酒運転による悲惨な事故が社会的に問題視され、罰則強化が行われて重い罪が科されるようになりました。それでも、飲酒運転による事故は無くなっていません。罰を重くすることだけが、解決策ではなさそうです。実は、ルールを守る傾向には、人々が持つ様々な性質が関係していることが、少しずつ、分かってきています。ルールを守る傾向が明らかになれば、人々がルールに従うような法制度をデザインするための重要な手掛かりになってきます。私の主な研究対象は、金融市場での企業の行動ですが、最近は身近なトピックスとして、道路交通法改正の影響について、大学生と一緒に研究を進めています。指導しているゼミの学生は、自動車の後席シートベルトの着用率の傾向と、任意自動車保険の加入行動との関係を分析して、行動経済学会の論文コンテストで、優秀賞を受賞しました。 広瀬ゼミのゼミ生は、経済学的な考え方を応用したテーマを取り上げて、自らの考えの妥当性を、データを用いた実証分析で検証しています。「甲子園出場校の勝つ確率は、地元で雪が降る日が多いほど低くなる」という研究成果で、懸賞論文で入賞するなど、プロの研究者とは一味違う、大学生ならではの興味深い分析を行ってきています。また、経済学的分析の面白さを伝えるため、高校生を対象に、「法律が変われば人々の行動は変わるのか?Excelで体験する経済学のデータ分析」という、データサイエンス入門の体験プログラムも実施しています。2020年8月に開催したプログラムでは、飲酒運転の罰則を強化した影響を確認するなど、データを用いて客観的に社会現象を捉えることの大切さを体験してもらいました。⾏動経済学会 第3回学⽣論⽂コンテストで優秀賞を受賞した室⽥誠さんと齋藤祐也さん。「ひらめき☆ときめきサイエンス〜ようこそ⼤学の研究室へ〜KAKENHI」では、Excelを使って、⾼校⽣に、データサイエンス⼊⾨を体験してもらいました。広瀬 純夫 教授2004年3⽉:東京⼤学⼤学院経済学研究科博⼠課程修了。博⼠(経済学:東京⼤学)。2004年、信州⼤学経済学部講師、2009年、同准教授を経て、2014年、信州⼤学学術研究院社会科学系教授。研究の未来と卒業後の将来像室田誠・齋藤祐也「罰則の有無による行動の違いと保険加入行動との関係」 2019年度 行動経済学会第3回学生論文コンテスト・学部学生部門 優秀賞兎本國弘「少子化問題解決の手段としての労働時間短縮・効率的労働」2017年度 日本統計協会懸賞統計論文・学生の部・審査員奨励賞中林健「私立高校の入学者確保の手段としての甲子園出場:都道府県別の甲子園大会勝率に関する分析を通じての考察」2015年度 日本統計協会懸賞統計論文・学生の部・優秀賞2014年度 信州大学経済学部ゼミ合同発表会・最優秀賞赤沼喜生・今枝翔馬「Yahoo!のEコマース無料化の影響」2013年度 信州大学経済学部ゼミ合同発表会・優秀賞主な研究事例【ゼミ生の主な研究成果】

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