人文学部研究紹介2021-2022
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MESSAGES from GRADUATES折井大哲2021年卒業丸善出版株式会社蛯名 新2018年卒業 青森県庁卒業後の将来を考えるにあたり、まず自分の心の内を言語化する力が必要。卒業論文のテーマは人生を費やして考え続けるもの学びたいときに学ぶことができる大学生活はとても貴重。私は在学時、比較文学分野というところで学んでいましたが、「分野」という概念は解体されるそうで、だんだんと過去がしっかり過去になってゆくのだな、という感慨があります。私が過ごした時間はすでに過去のものですから、そこから個人的な体験を語っても、それはすでに、あまり読む方の役には立たない情報になっているかもしれません。「学部を卒業した後の人生どうしようかな」ということを考えるにあたり、自分の心の内を言語化する力がまずは必要だと思います。つまり、何が好きで、何が嫌いで、許容できるもののラインはどこで……ということですね。そういったことを考える際、人文学部で養われる力はきっと助けになることと思います。でも、そうでなくてもいいと思います。20歳前後で何か人生のすべてが決まってしまうわけではきっとないですし、偉そうにこの文章を書いている私も、読んでいる皆さんといくつも違いません。この先何を選んでも、どうせいつかは何か後悔すると思うので、せめて自分で選んだということには納得できるといいと思います。選ぶということは考えるということですから、やっぱりいくらか、人文学部で考えることは助けになるでしょうか。入学された方にも、ここを読んだけど入学はしなかった方にも、どうか行く先に幸が多くありますように。私の大学生活は主に二つの刺激を受けていた。一つは、生活環境の変化である。私は青森県出身で、大学時代を松本市で過ごした。全国から集まった学生たちとの触れあいは視野を広くさせ、気づきも与えてくれた。二つは、二年次以降コースに所属してからもさまざまな分野の学生、先生方と交流を持ったことだ。私は歴史学コース日本近現代史分野に所属していたが、卒業論文で扱うテーマを決めるきっかけとなったのは社会学のフィールドワークに参加したことである。接する情報や問題、ものの見方や考え方などは偏ってしまいがちである。講義はもちろん、廊下での立ち話、時には食事をともにしながらの語らいによって自分にないものを知り、また補うことができた。卒業論文を書くにあたり、ある先生に伺った「卒業論文とは人生の墓標である」という言葉が強く印象に残っている。卒業論文のテーマは、卒業後の人生を費やして考え続けるものだと思う。大学卒業後、学びたいときに学ぶことができる環境がいかに貴重だったかを実感している。自分の大学生活、特に勉学については多くの後悔がある。もちろん、自らの選択に悔いを持たずに居られる人は少ない。これから入学する皆さんは、後悔が少しでも少なくなるよう、限られた時間で一生懸命に学んでほしい。58

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