人文学部研究紹介2021-2022
35/68

 できます。でも、一つの小説を集中的にというのは違うかな。複数のものをつなぐ、境界をまたいでみることが比較文学の立場なので。──つまり、新しくてもよい。 そう。──面白い研究分野ですね。比較文学という専攻分野がある大学自体、そんなに多くないと聞いたことがあるのですが、さらに踏み込んで、比較文学を松本、信州で学ぶことの意義や魅力って何でしょうか。 たとえばね、日仏の文化比較をするとなると、日本的なもの、フランス的なものといった単純な話になりがちでしょ。日本はもたれ合いの文化で、フランスは自立した個人の文化だとか、面白くないですよね。そうならないためには別の視点、たとえば同じ日本といっても違うな、単純化してはいかんな、といったローカルな視点を支える場所が必要。その意味で松本という街はほどよいかもしれませんね。──国宝のお城があって、カフェや劇場、ギャラリーもあって、バランスがとれている。都会じゃないけど、田舎でもないなあ。密度がありますよね。 そう。でもそれって松本だけじゃないよね(笑)。より大切なのは、信州大学には比較文学の伝統があるということです。北欧神話などの貴重な蔵書もあるし、何よりも自由な雰囲気があります。少人数制の教育だから懇切丁寧な指導なんだけど、押しつけではなくて、どんなことにもとことんつき合おうという感じ。学生はいろんな研究が可能です。比較文学の開かれ方はとてつもないですよ。学生のこだわりでいくらでも好きなことができるからね。卒論テーマについても教員から具体的な指示はしません。とにかく最初に熱い感動がほしいし、切実な探究心がほしい。簡単に言うと学生には自分の好きなことに出会ってほしいんですよ。そのために授業や教員をどんどん活用してほしい。自由で少人数制。少し矛盾しているけど、この人文学部では成り立つんですよ。比較文学はまさしくそう。──学生に何を求めますか。 他人に多くは求めません(笑) 。でも本当に好きなことを見つけ出して、それに取り組んでほしいです。いろんなことにほどほどコメントする力よりも、突っ込んで見たり考えたりする力をつけてほしいですね。あとは元気で!ってところかな(笑)。SHIBUYA, Yutaka33

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る