研究紹介(2021-2022)0610
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2生命機能科学コースDC機能分子設計学研究室梅澤公二助教日本学術振興会特別研究員を経て2016年2月より信州大学農学部に赴任。分子の立体構造と分子認識・生理活性機構の関係を解き明かし、人にとって有益な分子の理論的設計に役立てたい。研究分野は生物物理学や生物情報学。生体内で働いている分子はATPなどの低分子からタンパク質や核酸などの高分子まで様々です。特にタンパク質は代謝や情報伝達に深く関わっており、タンパク質は相手となる分子との結合を介して生命機能を果たしています。そして、相手と結合するには特定の立体構造を形成することが重要です。しかし、最近では不安定かつ不特定な立体構造を形成するタンパク質が注目されています。そのようなタンパク質は病気(例えば、アルツハイマー病など)に関連していることが知られてきました。本研究室では、計算機の力を使って分子が取りうるすべての立体構造を調べ、結合の基本となる立体構造を解き明かし、生体内での情報伝達の仕組みを分子構造から探求しています。立体構造の立場から分子の機能を予測・発見する技術を開発しています。最終的な目標は、ある分子がもつ未知の機能(どんな相手分子のどこに、どのように、どのくらいの強さで結合するのか)を予測可能にすることです。この目標を達成できれば、タンパク質をはじめとする生体分子の情報ネットワークの解明だけではなく、薬になりうる候補分子の選定や薬理作用の再発見、薬物間相互作用、さらには毒性・副作用予測へつながります。私の夢は合理的かつ理論的に薬剤・機能性分子の設計を可能にすることです。計算化学、構造生物学の専門性を高めることができます。研究を通じて問題点の発見、問題解決へ向けた論理的な考察力を養うことができます。卒業後はIT関連会社、製薬会社、CRO等で活躍できる人材になれます。生命の情報を分子構造から理解するー計算構造生物化学ーABC研究から広がる未来卒業後の未来像梅澤写真「分子」と「機能」の相関性について分子シミュレーションやデータベース解析を用いて新たな知見や規則性を追求していく分子モデリングとプログラミング技術を習得・応用して、タンパク質の翻訳後修飾や構造のやわらかさがもたらす結合調節機構を解明する結合調節機構の解明分子の結合過程・分子モデリング・プログラミング計算機実験分子機能B計算化学構造生物やわらかさ?翻訳後修飾?・多数の構造モデル・分子の動き・溶媒分子など・結合相手・結合構造/部位・親和力などー結合様式ーー立体構造ー分子シミュレーションデータベース解析新たな知見や規則性分子シミュレーションデータベース解析新たな知見や規則性ケミカルバイオロジー研究室大神田淳子教授埼玉県川越市出身。京都大学准教授を経て2016年10月より現職。日米の大学と製薬会社のラボを経て現在に至る。専門は生物有機化学、医薬品化学、ケミカルバイオロジー。夢は研究を通じて国際社会に貢献すること。細胞シグナルを自在に制御する合成分子の創製分子認識化学を起点とする創薬ケミカルバイオロジーB研究から広がる未来卒業後の未来像たんぱく質を鋳型にした阻害剤合成先人は「医食同源」と表すことで生命を養い健康を保つこと、食の大切さを看破しました。この考え方は今も生きていると思います。私たちはケミカルバイオロジーのコンセプトと技術を生かし、より合目的的な創薬研究に貢献できないか、このことを先に見据えながら研究を展開します。サイエンスからの学びの活かし場所には、国境や性差による職業適正は無論のこと職域もありません。信州大学での学びを糧に、広い視野を持つ人材として社会へ飛び立つことになります。また大学院への進学を視野に入れることも選択肢の一つとなります。私たちの体の構成成分は有機分子です。つまり、生命と病気の仕組みを”化学の言葉”で理解し、”化学の道具”を使って操作することができます。当研究室では、有機合成化学と、化学的な手法で生物の仕組みを明らかにするケミカルバイオロジー(化学生物学)の双方の学問に立脚し、生体内の特定の化学反応を「阻害」「促進」「可視化」できる新しい生理活性分子の開発に取り組んでいます。主にがん、概日リズム、脳内シナプス伝達等に関連するたんぱく質分子に注目して、創薬研究を展開しています。また、化合物の農業利用にも挑戦し、植物ケミカルバイオロジーの新たな研究展開を図っています。成果は未知の細胞機能の解明に役立つだけでなく、医薬品研究の新しい方法を世界に示すことに通じます。2017年に創立した新しいラボです。信州大学から世界に向けた情報発信を目標に、全員で毎日元気に研究に取り組んでいます。活動を通じて地域社会を牽引し世界に通用する人材育成を行います。ひょんな発想やアイデアを大切にしてラボメンバーとの議論を通じて温め、新しい切り口で医療と食への貢献を目指します。特に難治性疾患、人口増加に伴う食糧問題に対する化学による解決策を考えてゆきます。大学で学ぶことで、今まで以上に、課題設定と解決に向けた自由闊達な考えを述べ合うことを楽しめるようになるでしょう。知恵を絞ってアイデアを出し合い実験し、次なる一手を考えていきます。ケミカルバイオロジー研究室で互いに切磋琢磨することで、専門分野を深耕するだけでなく応用力あふれる専門家となり活躍の場を広げることが出来るでしょう。たんぱく質の平坦な表面に結合する中分子医薬天然物を用いた抗がん剤開発植物促進剤の開発Chem. Asian J. 2020, 15, 742.Chem. Eur. J. 2019, 25, 13531. (Hot Paper)悪性がん因子の活性化阻害剤ジテルペン配糖体フシコクシン気孔開口促進抗腫瘍活性Chem. Eur. J. 2018, 24, 16066.生命機能科学コース

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