研究紹介(2021-2022)0610
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33木材利用学研究室森林とバイオ研究(ラボワーク)、全く無縁な両者のように思いがちですが、森林を構成する樹木の目に見える個体レベルでの活動は、細胞・遺伝子レベルでの活動と密接にリンクしています。当研究室では、樹幹中に木材を形成するという樹木特有の仕組みの解明や、植物にとって最も重要なイオンであるカリウムイオンを細胞内外に輸送する膜タンパク質(膜輸送体)をコードする遺伝子の解析を主なテーマとして、樹木の生命活動の仕組みや生命活動により生み出される木材の性質について細胞・遺伝子レベルで研究を行っています。樹木を対象とした細胞・遺伝子レベルでの研究は、シロイヌナズナ、イネをはじめとする草本植物に比べて大きく立ち遅れています。特に、針葉樹に関してはほとんど研究が進んでいないのが現状です。当研究室では、樹木の木材形成や環境応答の仕組みについて細胞・遺伝子レベルで解明し、得られた知見を樹木個体レベルでの仕組みに結びつけることを目指しています。将来的には、分子育種による成長、環境ストレス耐性などの形質に優れた樹木の開発や、開発された樹木を用いた砂漠や塩害地の緑化などにつながるものと期待されます。建材・住宅関連企業をはじめ、様々な分野の企業に卒業生を輩出しています。研究室で得た知識、技術、そして経験を活かし、民間、公務員を問わず幅広い分野で活躍することが期待されます。また、本学または他大学の大学院に進学し、研究職を目指す選択肢も考えられます。細尾佳宏准教授新潟大学自然科学系助手、信州大学ファイバーナノテク国際若手研究者育成拠点助教を経て、2012年より現職。主な研究分野は、樹木を対象とした細胞生物学や分子生物学。森林でバイオ研究ー樹木の生命活動をミクロなレベルで科学するー針葉樹では世界で初めてK+膜輸送体をコードする遺伝子(CjKUP1)を単離し、その機能や発現特性を明らかにした野外で生育する樹木または人工気象器内で栽培した苗木から試料を採取して実験室に持ち帰り、様々な解析を行うスギNH2COOH細胞膜細胞外細胞内スギのカリウムイオン(K+)膜輸送体:CjKUP1の膜貫通構造CjKUP1は細胞内へK+を取り込む機能を持つ樹木の遺伝子解析実験研究から広がる未来卒業後の未来像森林・環境共生学コース森林政策学研究室三木敦朗助教信州大学農学部を卒業後、岩手大学(「持続可能な発展のための教育」の促進を担当)などを経て、2009年度より現職。博士(農学)。現場での聞き取り調査や、アンケート調査をおこなう小中学校での森林・環境教育の副読本も作成している森林を活用した、ほんとうの意味で豊かな暮らしを考える林業は、木材を生産するだけでなく、様々な素材・食料・燃料などを生産する産業です。また、森林に関係するレクレーションや文化を支える産業でもあります。当研究室では、森林・林業の新しい可能性を、地域の歴史や実践の中から探り出し、気候危機を乗り越える新しい社会の要素を明らかにすることを目指しています。小中学生むけの森林教育の学習資料を作成したり、森林との新しい関わりをつくろうとしている自治体や市民団体の活動に関わったりしています。そうした共同研究もお声がけください。www.facebook.com/shinshuforepol学生とともに、林業の担い手と特用林産物を含む林業経営の現状把握、木質バイオマスの利活用、林産物の販売、森林を利用した地域づくり・住民自治や、狩猟とジビエの利用などを調査研究しています。それらに基づいて、森林・林業のあり方や新しい担い手養成について、地域の関係者のみなさんと考える取り組みもしています。最近は、森林所有に関する課題を扱っています。ここ数年では、公務員(森林・林業関係)や、製材メーカー、大学院進学などです。いずれも、研究室で学んだこと、研究したことが活かされています。研究から広がる未来卒業後の未来像森林・環境共生学コース

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