研究紹介(2021-2022)0610
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18生殖細胞工学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像諸白家奈子助教大学院博士課程を修了後米国や国内での博士研究員を経て、2017年より現職。研究分野は動物生殖学、発生工学。哺乳類の卵母細胞と卵胞の発育過程の解明、卵巣の体外培養技術の開発を行っている。哺乳類の卵巣内では未発育な生殖細胞が袋状の構造をとる卵胞に一個ずつ囲まれて数万から数十万個存在します。しかし、そのうちの半数以上は卵胞の発育過程で死滅し、一生涯で成熟卵母細胞にまで発生し排卵される卵子の数は、発生・分化した全生殖細胞のうち1%未満です。実際に、どのような資質をもつ卵母細胞・卵胞が発育を開始するのか、また発育の過程で死滅する卵母細胞・卵胞はどのような特徴をもつのかは明らかになっていません。これらの現象を解明することで、産業動物の効率的な生産・増産、絶滅危惧種の保存、さらに生殖医療への応用を目指しています。動物が生まれるために、卵母細胞の発育過程は雌動物で行われる最初の生殖活動です。しかし、体内現象であることからその解明は難しく工夫が必要です。そこで、生殖細胞工学研究室では、マウス卵巣組織等を体外で培養する体外モデルを用い、複雑な卵母細胞発育現象を体外で可視化し解析する技術の開発を行っています。卵母細胞の発育機構が解明されることで、卵巣内での卵胞発育を人為的に調節することが可能になります。将来は、産業動物のより効率的な繁殖方法の開発に繋がると考えられます。卒業研究等を通して、科学の本質を理解し、課題を論理的にそして自由に考えディスカッションする力を養うことで、将来の目指す道への土台作りができます。卒業後は大学院進学、各種メーカーでの研究・開発職、公務員等の様々な分野での活躍が期待されます。卵子はどのように発育し選ばれるのか?~効率的な動物生産を目指して~私たちは卵巣の体外培養技術を用いて、卵母細胞と卵胞の発育機構のメカニズムの解明を目指す。生後10日齢マウスの卵巣切片の染色像A:卵母細胞はそれぞれ1個の卵胞に存在し、卵母細胞は卵胞が発育するのに伴って発育する。B:Aの一部拡大像.卵巣にはたくさんの未発育な卵胞が存在する(破線で囲まれた部分)。B卵母細胞の多くは発育過程で退行する。排卵卵子はどのようなメカニズムによって選ばれるのか?どのような因子が卵胞の発育に関与しているのか?ABB50µm動物資源生命科学コース米倉真一教授米国国立衛生研究所、東京都神経科学総合研究所を経て2020年より現職。研究分野は動物生理学。特に乳腺、筋肉組織発達の分子機構や健康長寿を支える食資源に関心がある。骨格筋、脂肪、乳腺の培養細胞で得られる形質は、生体内で起きる現象を反映している。図右は骨格筋分化過程にある細胞。(写真一枚or複数枚組み合わせ)マウス、キイロショウジョウバエなどの生体モデルが、乳腺発達機構や神経変性のメカニズムを探索するために役立てられている。分子・細胞の世界から食と健康⾧寿の未来を切り拓く活性あり分化0日目分化4日目培養動物細胞を用いた研究乳腺神経動物生理学研究室では、普段私たちが口にしている「食」の付加価値を高める研究を行っています。アルツハイマー病など難病疾患に対しては、医学的治療だけでなく予防的アプローチも重要であると考えられます。神経変性疾患モデルを使った研究では、食資源の持つ疾患予防機能を見出すことが期待されます。また、乳や食肉の安定的供給には、生体内現象やストレスの解明が新たな飼料技術・飼養方法の提案に不可欠です。このように産業の入り口に立ち、今まで不可能だったことを解決する糸口が探索されています。動物の体をつくる様々な組織は、独自の発達機構や恒常性維持システムを持っています。神経はどのようにして情報を伝達するのか?筋繊維はどのように発達するのか?生命現象に対する多数の問いが、今日まで生体内に対する理解を深めてきました。そして、多数の生理学的知見が再生医療や疾患治療、畜産業の応用に役立てられています。動物生理学研究室では生命現象の分子機構に着目し、組織構成単位の細胞から実験動物まで幅広い観点から研究を行っています。機能性食資源の探索や、乳腺・筋肉などの分子基盤解明が未来の食を創造します。日々の実験を通して、データの見方や考え方、考察力などの論理的思考力が養われます。また、プレゼンテーションの習得にも重点を置き、説明能力に優れた人材が輩出されています。卒業生は主に、食品会社などで活躍しています。動物生理学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像動物資源生命科学コース

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