研究紹介(2021-2022)0610
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17卵子応用生殖科学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像富岡郁夫准教授東北大学、慶應義塾大学、実験動物中央研究所、国立精神・神経医療研究センターを経て、2020年より現職。専門は動物生殖学・発生工学・神経科学。生殖学の応用技術である発生工学技術は、個体の遺伝子改変を可能にし、医学・生理学・農学をはじめとする生命科学分野で必須のツールとなっています。この技術を用いると難病の原因遺伝子を動物に持たせることができ、ヒトの難病モデルを作出できます。優秀なモデル動物の作出は難病克服への特急券となり、農学部から難病克服に貢献できる研究成果を発信します。生命の始まりである受精卵は、動物を構成する全ての細胞へと分化できる万能細胞と呼ばれています。その受精卵を扱う生殖学も、万能細胞のようにあらゆる研究分野へと繋がる学問です。本研究室では、①動物生殖学、②発生工学、③神経科学の3本柱で研究を進めています。①動物生殖学研究では、代謝シグナルと性ホルモン合成の関連メカニズムを解明することで、生活習慣病に起因するヒトの不妊や、濃厚飼料の給餌と関連性が示されているウシの受胎率低下の克服を目指します。②発生工学研究では、本研究室の強みである個体レベルでの遺伝子改変技術を用いて、ノックアウト動物や遺伝子改変動物を作出し、未知の遺伝子の機能探索や、新たな研究ツールとなる動物を作出します。③神経科学研究では、小型の霊長類であるマーモセットを用いて、ヒトの難病モデルを作出し、疾患の克服を目指します。遺伝子・分子レベルから個体レベルまでのオールラウンドな研究、そして基礎研究では終わらない実践的研究を目指します。研究者・製薬会社・食品会社・病院・生殖医療クリニック・胚培養士・細胞培養士・ノーベル賞学者など生命の始まりの探求遺伝子改変技術で難病克服に貢献哺乳動物の卵子や精子を顕微鏡下で操作するマイクロマニピュレーター(左)と、体細胞クローン動物や遺伝子改変動物を作出する胚操作(右)。小型の霊長類であるマーモセット(左)と、そのES細胞(右上)・iPS細胞(右下)。遺伝子改変技術が確立され、扱い易いため、近年、ヒトのモデルとして注目を浴びている霊長類である。ES細胞iPS細胞マイクロマニピュレーターホールディングピペットインジェクションピペット卵子コモンマーモセット動物資源生命科学コース動物生体機構学研究室(Laboratoryof Animal Functional Anatomy: LAFA)は、動物解剖組織学の研究室です。「食べる」をキーワードに、様々な染色方法を駆使し、光学顕微鏡・走査型共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡などを武器に、ミクロの世界へ探索の旅に出かけています。その旅の中で得られた一枚の写真が世界を変えるかも知れないと信じながら。生物界のフォトジャーナリスト、それが我々解剖組織学者です。現在、消化管の内分泌細胞に焦点を当てて、研究を行っています。消化管には無数の神経細胞と内分泌細胞が存在しています。消化管は、食物の消化・吸収を行うだけではなく、「第2の脳」でもあり最大の内分泌組織でもある訳です。また、粘膜付随リンパ組織を発達させたリンパ組織でもあります。消化管における神経-内分泌-免疫系のクロストークを解明できれば、「食べる」ことにより、血糖調節や粘膜免疫などの生体機能を制御することが可能になるかも知れません。また、新たな機能性食品の開発にも繋がる可能性を含んでいます。目標を定め、その目標にたどり着くための方法を選び、そこから得られた結果を考察し、ひとつの結論を導き出す。その結論から次の目標を定める。こうした理系の思考回路を身に付けられる様に指導しています。平松浩二教授製薬会社勤務を経て、1991年より信州大学農学部勤務。神経系、内分泌系及び免疫系のクロストークについて、解剖組織学的手法を駆使して研究を行っている。一枚の写真が世界を変える!?生物界のフォトジャーナリスト、それが解剖組織学者!!ニワトリ小腸における基底顆粒細胞の透過型電子顕微鏡像.(写真一枚or複数枚組み合わせ)ニワトリ回腸の基底顆粒細胞におけるGLP-1(緑色蛍光)とニューロテンシン(赤色蛍光)の共存(黄色蛍光).動物資源生命科学コース動物生体機構学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像

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