研究紹介(2021-2022)0610
20/44

16皆さんは、「ソロモンの指輪」って知っていますか?ソロモン王が動物たちと話すときに使う道具のことです。しかし現実の世界に、そのような指輪は存在しません。ヒトと言葉を交わすことができない動物の気持ちを理解できる唯一のツールが動物行動学です。私たちの研究室では、ウシやヒツジといった農用動物(家畜)を対象に、彼らが身体的、精神的苦痛を少しでも感じることなく生活できる状態(アニマルウェルフェアと言います)を把握し、良好なアニマルウェルフェア状態となるような飼育方法の開発、提案を目指しています。私たちの暮らしは、様々な点で、動物たちと関わっています。例えば、「HappyCow,HappyLife」で表される様に、幸せな生活環境で飼育されている乳牛は乳量も多く、生産されたミルクの質も高いので、私たちの生活の質は向上します。近年、生産者1戸あたりの家畜飼育頭数が増加傾向にあります。右の写真のように家畜の状態を精密に監視するためには多大な時間と労力を要します。私たちの研究室では、動物とは縁遠い様々な分野の企業との共同研究を進めていますので、卒業論文、修士論文を通じて、畜産分野の新たな展開を自分の目で確かめ、経験することができます。動物の飼養管理システムの構築は、動物行動学のみならず、多面的なアプローチを必要としています。卒業生は自ずと目前の事象を多面的に捉える能力を身に付けます。卒業後は、技術指導者、専門機関での動物飼育管理者等として活躍できる人材として社会に飛び立ちます。竹田謙一准教授2000年信州大学農学部助手を経て、2008年より現職。この間、山梨県酪農試験場客員研究員を併任。専門は、応用動物行動学、家畜管理学。動物福祉(アニマルウェルフェア)に配慮した家畜の飼養管理管理に興味を持って、研究を進めています。動物の快適な生活環境の創造を目指して~精密家畜管理学の世界~行動観察から乳牛の肉体的、心理的状態を把握し、調査牧場における乳牛の動物福祉(アニマルウェルフェア)を評価しています。放牧牛の状態を把握するためのIoT機器を首に装着し、いつでも、どこでも、だれもが牛の様子が分かるシステムの開発に取り組んでいます。動物行動管理学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像動物資源生命科学コース食と免疫の融合研究~食生活の改善で免疫機能を高める~私たちの体内環境は、食生活の乱れや加齢、大気汚染、ストレスなどの生活環境を取り巻く様々な要因によって悪化し、免疫機能が低下するといわれていますが、そのメカニズムの全容解明には至っていません。そこで当研究室では、食品の摂取による免疫機能への影響について解析し、その分子メカニズムを明らかにします。また、免疫機能の低下に伴う病気を予防するために、食品中に含まれる免疫賦活成分を探索し、科学的エビデンスに基づいた免疫機能を高める食習慣に関する研究を進めています。免疫賦活効果あるいは炎症抑制効果をもつ食品由来成分を探索・同定します。将来的には、感染症やアレルギー疾患、がんなどの各種免疫関連疾患の予防につながる食品の開発を目指します。また、免疫機能を高める食習慣を提案し、健康長寿社会に貢献する先端的な研究を展開します。免疫学に関する実験を通して、細胞培養、タンパク質実験、遺伝子実験、マウス実験の手技が身につきます。卒業後は、食品会社、製薬会社への就職が期待できます。田中沙智准教授北海道大学、帯広畜産大学を経て、2013年10月より信州大学農学部に赴任。これまで免疫学を中心に研究を行ってきた。免疫学の他、栄養学、予防医学、抗加齢医学に関心がある。<研究の概要>信州の伝統野菜の一つである野沢菜など、食品および食品由来成分がもつ免疫調節機能とそのメカニズムを明らかにする。食品免疫機能学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像野沢菜野沢菜漬け浅漬け古漬けマウスの脾臓から免疫細胞を単離マウスに摂取させて免疫状態を評価する野沢菜により活性化した免疫細胞の様子動物資源生命科学コース

元のページ  ../index.html#20

このブックを見る