大学概要2020
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超高齢社会の日本では、加齢や病気等により失われた身体機能を代替・補助する医療機器の需要が高まっています。しかし、医療機器開発はこれまで個別に行われ、安全性や有用性及び不具合などの情報は企業及び研究機関の間で共有されず、開発に時間とコストがかかっていました。この課題を解決するために、信州大学を幹事機関とし、日本の医療機器開発を牽引する企業と研究機関が集結した「埋込型・装着型デバイス共創コンソーシアム」を形成しました。2020年4月時点で、7大学14企業が参画し、11の研究開発課題を実装しています。この共創コンソーシアムでは、高度な医療機器の研究開発を進めるとともに、医療機器開発に関わる情報を集約・共有する「生理学的データ統合システム」を構築します。それによって医療機器開発を加速し、一生涯自立して生活できる社会の実現を目指します。 ※OPERAプログラムとはOPERAは、新たな基幹産業の育成の核となる革新的技術の創出を目指すとともに、持続的な研究環境・研究体制・人材育成システムを持つプラットフォーム形成を目的としています。JSTからの支援額(年間1.7億円程度)と、同等の民間資金を活用したマッチングファンド形式で、基礎研究から企業が参画し、研究開発費及び博士課程学生等の人件費等の拠出を通じた本格的な産学共同研究を推進するものです。信州大学は2020年4月現在、全国7拠点ある共創プラットフォーム型の1つに選定されています。生理学的データ統合システムの構築による生体埋込型・装着型デバイス開発基盤の創出科学技術振興機構(JST)産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)※1 CAR-T細胞は、がん抗原と結合する人工受容体を導入した遺伝子改変T細胞の総称です。CAR-T細胞を患者に輸注し、がん細胞を死滅させる治療法をCAR-T療法といいます。中沢教授の開発した革新的なCAR-T細胞作製技術は簡単・安価・安全な遺伝子・細胞治療技術として注目を集めています。日本医療研究開発機構 革新的がん医療実用化研究事業CD116陽性骨髄系腫瘍を標的とした非ウイルス遺伝子改変キメラ抗原受容体T細胞の非臨床試験CD116陽性急性骨髄性白血病および若年性骨髄単球性白血病を対象とする非ウイルス遺伝子改変GMR CAR-T細胞のFIH医師主導治験近年、次世代がん治療薬として、欧米発の遺伝子・細胞医薬品の臨床試験と薬事承認が全世界で急速に進んでいます。わが国においては、シーズの研究開発は活発化しているものの、医薬品化に向けた非臨床試験拠点、製造拠点、早期臨床試験拠点の整備が遅れているため、日本発の遺伝子・細胞医薬品の開発は世界に後れを取っていると言わざるを得ません。この課題を解決するため、学術研究院(医学系)中沢 洋三 教授は当該事業により、「CAR-T細胞※1」のシーズ開発と非臨床試験を医学部小児医学教室、製造を医学部附属病院先端細胞治療センター、早期臨床試験を医学部附属病院が担当するシームレスな連携基盤を信大内に整備しました。現在信大発の遺伝子・細胞医薬品の開発が進行中です。また、開発分担者の株式会社イナリサーチ内(長野県伊那市)に、霊長類を用いた遺伝子・細胞医薬品シーズの非臨床試験を行う「遺伝子・細胞治療研究開発センター」を開設し、他のアカデミアや企業による日本発の遺伝子・細胞医薬品の開発にも貢献しています。日本医療研究開発機構 再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(遺伝子治療製造技術開発)日本発の遺伝子改変T細胞の実用化を促進するための、霊長類モデルを用いた安全性評価系の基盤整備医学部小児医学教室遺伝子・細胞治療実験室医学部附属病院先端細胞治療センター細胞調整室遺伝子・細胞治療研究開発センター信州大学ラボ 品質検査室15

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