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©Yomeishu2020年はウイルス感染に関わるニュースが世界中を席巻しました。猛威をふるっている新型コロナウイルスだけでなく、地球上には多種多様なウイルス性疾患が存在しています。「今後はインフルエンザウイルス以外のウイルスに対する機能も調べていきたいと考えています」と芦部さん。養命酒の製造で使われるクロモジは、青森県や岩手県、長野県で採取されています。クロモジの機能性解明を進め、同時にクロモジが育つ森林整備という新たな展開にもつなげていきたいといいます。今後、クロモジに含まれるどの成分が作用しているのか、詳細な追求が待たれます。河原准教授はその探求を続けることで、より効果が高いエキスの調製にもつなげられると考えています。「食品であれば安全性も高く、予防という観点から日常的に摂取できる。それが機能性食品の良さであり強み。特に、古くから利用されてきた生薬には特徴的な成分が含まれていることが多く、大きな可能性を秘めていると感じています。今後、研究を重ねることで、生薬の可能性をさらに広げ、消費者が食品を賢く選択するためのエビデンスを提供していきたいと考えています」(河原准教授)。400年の歴史を持つという国産ハーブ「クロモジ」の新たな可能性に、期待がかかります。因となる細胞の生物学的応答性などを見ながら、その機能性を探求しています。病態を対象とすることから、インフルエンザウイルスの取り扱いに関するノウハウと知見もありました。2019年1月から始まった共同研究。河原准教授は、インフルエンザウイルスの増殖サイクルに着目し、ウイルス感染前後の細胞に時間帯ごとクロモジエキスを処理、その増殖度合を観察しました。結果、細胞への吸着・侵入が起きている「感染開始から1時間後」までの時間帯でクロモジエキスを作用させると、全く作用させない場合と比較して99.5%以上、ウイルスの増殖を抑制できていることが分かりました。また、抑制効果を可視化するため、感染後に細胞内でつくられるウイルスタンパク質を蛍光染色する手法により、ウイルス感染後にタンパク質が発現する状況を観察した。その結果、クロモジエキスの添加によって、発現が顕著に抑えられていることが視覚的にも確認された。(図1)その他にも、ウイルスの吸着と侵入のどちらに効いているのかを調べるためウイルス吸着過程に及ぼす影響を評価する赤血球凝集阻止試験やエンドサイトーシス過程に対する抑制試験など、様々な観点から抑制機構を解析した。「それらを総合的に判断した結果、吸着と侵入という感染が成立する課程で、最も顕著な抑制効果があることが明らかとなったのです」(河原准教授)。な漢方の本場、中国にも近縁の種類が自生こそするものの、日本ほど身近な存在ではなく研究事例も多くありません。だからこそ、その機能性を日本から発信することに、大きな意義を感じています」(芦部さん)。養命酒の歴史は400年前の江戸時代にまで遡ります。長く東洋医学の世界で伝えられてきた効能も、現代に入り学術的な研究が盛んに行われるようになりました。「数年前、当社と国立国際医療研究センターなどとの共同研究によって、クロモジのインフルエンザ感染抑制という新たな機能性が分かってきました。そのメカニズム解明のために、河原先生に共同研究をお願いしたんです」(芦部さん)。河原准教授は食品素材に含まれる機能性成分の探索と応用が研究テーマ。食品の成分的な評価だけでなく、病態の原信州大学×養命酒。機能性評価が伝統的生薬に新たな価値を与える生薬クロモジは可能性の宝庫。さらなる機能性探求で目指す健康のゴール©Yomeishu 10

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