NOW123_web
7/20

手嶋教授は、フッ素を選択的に吸着する高性能無機結晶材料(信大クリスタル)(※4)を開発、すでに日本で市販されているボトル型浄水器NaTiO(ナティオ)(※5)の改良を進めています。同時に、新たな浄水法として提案しているのが、信大クリスタルを封入した「ティーバッグ型」の浄水器です。「ティーバッグであれば安価な材料でつくれます。機械や電気も使わずどこでも簡易に浄水できるため、インフラが整っていない村落部にも適した浄水法だと考えています」と手嶋教授。信大クリスタルはレシピさえあれば誰でもつくることができます。手嶋教授は、現地での生産を想定し、骨格となる無機材料は現地調達できるものでレシピを開発。都市部だけでなく、村落でも生産できるよう、すでにコスト計算も行っており、現地に即した量産化体制の確立を目指し、取組みを進めています。「木村教授が開発している高感度化学センサと組み合わせれば、効率的に浄水できるようになります。現地に合った体制が整えば、アルーシャにおけるタンザニア政府数値目標の『安全な水へのアクセス』に対して、解を出せると考えています」と手嶋教授は期待を込めて話しました。「信大クリスタル」でフッ素除去。提案するのは「ティーバッグ型」浄水器さんの人を救うことは確かだと思います。水はとても大切で、水なしでは私たちは生きられません。そして飲料水となるきれいな水が必要です。タンザニア政府と日本政府がともに水問題に取り組む機会になっていると思います。学長:今、高校生ですが今後の進路をどのように考えていますか?シャロン:将来、外科医になることを目指しています。学長:外科医を目指すきっかけがあったのですか?シャロン:はい。タンザニアではたくさんの人が苦しんでいるからです。脳や心臓など複雑な手術を行えるような専門人材が少ないため、治療のために海外に行くように言われますが、費用が工面できない多くの患者は、病気のまま亡くなっていきます。そのような人々を助けたいのです。学長:信州大学医学部附属病院には毎年ナイジェリアから脳外科の方が研修にいらしています。附属病院には、IoTやAIを活用した「スマート治療室」ができました。将来、外科医として戻ってきませんか?シャロン:はい、是非そうしたいです。学長:タンザニアに帰ったら、この経験をどのように伝えたいですか?シャロン:信州大学はとても素晴らしい大学だったと伝えたいです。私たちタンザニアを、特に水問題についてとても支援してくれている、と。手嶋 勝弥信州大学学術研究院(工学系)教授同大先鋭領域融合研究群先鋭材料研究所長、学長補佐信州大学卓越教授(称号)濱田州博学長とシャロンさん繊維学部講堂にて濱田 州博学長(以下学長):自己紹介をお願いします。シャロンさん(以下敬称略):(以下、日本語)おはようございます。私はシャロン、17歳です。2月6日、飛行機で20時間くらいかけて、アフリカの東のタンザニアから来ました。言語はスワヒリ語です。趣味は水泳と読書と音楽です。どうぞよろしくお願いします。学長:日本、長野県の印象はいかがですか?シャロン:来日は2度目で長野県に来たのは初めてです。戸隠、志賀高原、善光寺などに行きました。とっても自然に溢れていて気に入りました。また、生まれて初めて雪を見ることができましたので私はとてもラッキーだと思います。とても寒かったですけれど、雪はとても好きです。学長:さくら女子中学の近くにはメルー山がありますね。メルー山と戸隠を比べてみると、どうですか?シャロン:少し違いますね。メルー山は一つの山ですが、戸隠はたくさんの山から成っています。学長:水問題について学んできたと思いますが、タンザニアで学んだことと来日してから学んだことに違いはありますか?シャロン:タンザニアで私が学んだことはセオリーがほとんどで、水がどのように汚染されたか、水に含まれるどのような物質が危険であるか、などでした。信州大学ではより高度な学びができ、それらが何であるのか、何が問題であるか、解決方法は何か、ということを学びました。繊維学部ではセンサを使い、水の中に含まれるフッ素を検出する研究が行われています。これはとても素晴らしいアイディアだと思いました。なぜなら、検出装置によって、その水は飲んでもよいのか、飲めないのか気づくことができるからです。学長:科学技術振興機構のCOIプロジェクトを通し、様々な交流が行われていますがどのような感想をお持ちですか?シャロン:COIプロジェクトのおかげでたく濱田学長&シャロンさん対談COLUMN(2020年3月24日、繊維学部卒業式の後に収録・撮影)(※4)信州大学の結晶化技術を応用した高性能無機結晶材料の総称。その組成や結晶構造を変えることでさまざまな特性を持たせることができる(※5)信大クリスタルを使ったフィルターを備えた携帯型浄水ボトル。鉛イオン等の重金属イオン除去を目的としたものはアメリカのNFS認証を取得済同プロジェクトに協力してくれる現地のセカンダリースクール、さくら女子中学校は信大COIプロジェクトと協力協定を結んでおり、同校を卒業されたシャロンさん(Sharon Tom Ayoさん)がCOIの学習体験プログラムによりちょうど来日中で学長のインタビューに応えてくれました。ティーバッグ型浄水メディアNaTiOでコップの水を浄水06

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る