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100%、村落部で90%(2005年実績は都市部78%、村落部54%)を達成する計画を打ち出しました。しかしタンザニアの人口は現在も増え続け、2025年までの20年間で3,600万人以上増加するとされています。単純な水質改善・水量確保ではなく、サスティナブルで統合的な水資源管理の提案が求められているのです。本プロジェクトには、統括として「統合的水資源管理」が専門の吉谷純一教授、現地での調査・研究に、工学部、繊維学部の3人の研究者が参画しています。中屋眞司教授は、現地の実態調査を担当。木村睦教授は、フッ素濃度を検出できる高感度化学センサ、手嶋勝弥教授は、フッ素除去を目的とした浄水器の開発に取り組んでいます。浄水器とセンサ-をセットで使用することで、確実に安全な水を確保することができます。現地の研究所や、タンザニアで水問題を取り扱っている政府機関・水省との協力体制も得ています。また、女性の理科教育向上に資するため本学と協力協定を締結した「さくら女子中学校」(アルーシャ市)で環境教育にも取り組んでいます。2019年3月には、子どもたちと一緒に飲用水の水質実験などを実施。雨量計の設置など、現地調査にも協力してもらっています。しかし危険性を知らせるだけでは子どもたちの不安をあおってしまう側面もあり、具体的な解決策の提示を同時に行えるよう留意しながら交流を続けています。フッ素汚染は、アフリカだけでなく、インドや中国など、世界各国でも起こっている問題です。COIでは、タンザニアでの研究成果をもとに、世界の水問題にもアプローチしていく考えです。NEXT PAGECOIが調査・研究を進めるアルーシャ市は、キリマンジャロ山から西に60キロ程離れた地点にある、人口約45万人(2012年)を抱えるタンザニアの地方都市です。標高4,562mのメルー山のふもとにあり、泉や河川などの水源もありますが、生活用水の約60%が深層地下水。その地下水のほとんどに、高濃度のフッ素が含まれています。本プロジェクトの目的は、現地に即したフッ素除去法を開発し、“安全・安価・入手可能”な飲用水を全ての人に供給すること。そのために次の2つの開発目標=1.原水に含まれる有害物質を選択して分離・除去するための無機結晶材料の開発と現地生産体制の確立2.水源の汚染機構を解明し持続的に地下水を管理する技術の移転と統合的に水質源管理できる体制整備―を掲げフッ素汚染と真摯に向き合っています。フッ素は、歯磨き粉やフライパンなど、日本でも身近なところに使われている物質ですが、高濃度に含まれた飲用水などを常用していると「フッ素症」と呼ばれる症状が現れることがあります。歯のエナメル質に小さな孔ができ褐色に変色したり、骨の奇形が現れたりといった重篤な健康被害も報告されています。世界保健機関では、飲用水中のフッ素の濃度基準を1.5ppm以下と規定していますが、アルーシャ市の平均濃度は4.5ppm。キリマンジャロ山流域の地域には汚染地域がほとんどなく、メルー山流域のアルーシャ周辺に集中していることも特徴です。フッ素汚染の多くは自然由来。休止中の火山であるメルー山の火山岩や溶岩層の鉱物からフッ素(イオン)が溶出し、地下水に流れ込むことが原因だと考えられています。タンザニア政府は、既存の研究から「骨炭」(※2)と呼ばれるフッ素除去材を利用した浄水法を開発していますが、品質の高い骨炭の量産化が実現できず、給水での利用にまでは至っていません。本プロジェクトでは、それに代わるものとして「高感度化学センサ」の開発と「高性能吸着材」を搭載した新規携帯型浄水ボトルや簡易型浄水タンクの提供などを構想しています。水質の問題だけではありません。アルーシャ中心部には都市給水機能があります。ボアホール(地面に垂直に開けた穴)から深層地下水を汲み上げ、配水池に供給、そこから各戸、もしくは「キオスク」と呼ばれる小型店舗に給水する仕組みです。人口増加が著しいアルーシャでは、水不足も深刻。新しいボアホールの掘削や上下水道等のインフラ整備が盛んに行われています。しかしフッ素汚染に対して具体策が打てないまま非効率な開発が進み、近年では取水可能量の減少も問題となっています。また、中心部から外れると、インフラが整っていない村落が広がっており、多くの住民が衛生的にすぐれない素掘りの井戸を使うか、生活地から離れた地点に政府が整備した深堀りの井戸から水を汲み上げ、苦労して生活地まで運んでいます。「水汲み」は、貧困層、とくに女性の学習機会を奪うことにもつながっています。タンザニア政府は、中所得国入りを目指す国家目標「タンザニア開発ビジョン2025」の中で、高い生活水準の達成要素として安全な水へのアクセスを謳い、水省の「水セクター開発計画(2005-2025)」で、安全な水へのアクセスを都市部で(※2)動物の骨を蒸し焼きにし、有機物を完全に炭化させて作るフッ素除去材タンザニアで深刻化するフッ素汚染とは?COIのシーズを活かしたプロジェクト4人の研究者の専門分野を結集。“安全・安価・入手可能”な解決策を東アフリカタンザニア連合共和国コンゴ民主共和国マウウィケニアザンジバル諸島ダルエスサラームドドマアルーシャメルー山キリマンジャロ山ウガンダルワンダブルンジザンビアモザンビーク04

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