信大医学部医学科研究紹介2020(日本語版)
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6社会問題解決型の運動生理学をめざす!地球温暖化、超高齢社会の社会問題に際し、その打開策を社会に提供することを理念とします。人類はその誕生以来、その優れた二足歩行による運動能(移動能)、環境適応能(体温調節能)によって地球上に広く分布してきました。しかし、最近の食糧・医療事情の改善、さらにアメニティの充実は、これらの能力を劣化させる一方、アメニティ獲得のための資源エネルギーの増大は、資源の枯渇、地球温暖化を促進させるという悪循環に陥っています。そこで、人類が生来持っている遺伝形質を再活用してこの悪循環を断ち切るという立場から研究を行っています。・運動時の熱中症予防のための方策の提供・生活習慣病・介護予防と治療のための方策の提供・運動効果発現のエピジェネティックメカニズムの解明私たちは、「インターバル速歩トレーニング」を核に、IoTを利用して遠隔型個別運動処方システムを開発し、5ヶ月間の同トレーニング効果について遺伝子も含め数千人規模のDBを構築しました。今後、このDBをもとに被験者の属性から同トレーニング効果の未来予測式を開発し、同トレーニングの国の内外への普及をめざします。これによって医療体制の治療から予防へのスムーズな移行をめざします。運動生理学・応用生理学を専攻する基礎研究者、運動を核とした予防医療・リハビリテーション医学を専門とする研究者・医療従事者、健康機器・健康食品など健康サービス産業に関係する企業の研究者など主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像スポーツ医科学(教授 増木静江)日常参加者は自宅周辺でインターバル速歩を行い、月に一度地域公民館を訪れ携帯型カロリー計の歩行記録をサーバに転送する。そして、折り返し送られてくるトレンドグラフ〔右上〕にしたがってトレーナーなどから指導をうける。さらに最近、同システムのスマホ・アプリを開発した。運動は炎症促進遺伝子(NFkB1, NFkB2など)のメチル化をおこし、活性を抑制し、 生活習慣病を改善する運動時の食道温、皮膚血流量、発汗速度を測定する発生、再生、癌化、その共通点は何か?どんな細胞にも変化できる多能な細胞(多能性幹細胞)を使うことで、今まで思いもよらなかったことができるようになってきています。例えば疾患のある臓器に健康な細胞を移植して蘇らせたり、移植用に臓器そのものを作り出したりすることも不可能ではなくなっています。私達は、このような細胞の性質に注目して、人類の健康に役立つ研究を進めています。・癌細胞のリプログラミング  iPS作製の技術を使い癌細胞を「元に戻す」ことで発癌機構の解明や治療法の開発を目指しています。・腎臓の発生と再生に関する研究  腎臓の基になる組織がどのようなメカニズムで維持され、分化するかを、動物の胎児組織を使って調べています。・疾患特異的iPS細胞を用いた病態解明  エーラスダンロス症候群という遺伝病の解明をしています。・多能性幹細胞におけるエピジェネティック因子の機能解析  持っている遺伝情報は同じでも、さまざま細胞はそのさまざまな形質を維持してます。我々はその理由を研究しています。臓器を蘇らせる治療は再生医療と言って、将来の発展が期待されてます。もしかしたら、臓器だけでなく、老化や遺伝病も治せるようになるかもしれません。卒業生には医療関係の仕事のほか、大学や民間で研究している人が多くいます。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像組織発生学(准教授 城倉浩平)多能性幹細胞を心筋に分化させた写真心筋に特異的な構造とタンパク質が確認できる網膜芽細胞腫をリプログラミングしてできた癌幹細胞様細胞成長因子を用いると腎臓をつくる尿管芽が複数誘導される運動時の体温調節能を測定する運動効果発現に遺伝子修飾が関係している

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