信大医学部医学科研究紹介2020(日本語版)
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4“健康長寿” を実現するために加齢とともに、からだの様々な生理機能が衰えてきます。いわゆる“老化”です。「ヒトを含めた生物が、なぜ、どのような機序で老化するのか?」は、まだ良く分かっていません。さらに老化は高血圧、がん、認知症などを含む様々な病気の要因ともなりますが、その機構も良く理解されていません。老化を遅らせ、このような病気の無い“健康長寿”を達成するために、私達は、生物の老化メカニズムの生物学的理解、老化に伴い発症する様々な老化病態の発症機序の解明、さらにそれらの予防、治療法の開発を目指した研究を行なっています。・老化促進モデルマウスなどの実験動物や培養細胞を用いた老化および抗老化研究・運動やサプリメントなどの抗老化作用の解明 ・アミロイドーシスの病態と予防、治療法の解析 ・自然発症疾患モデル動物を用いた分子遺伝学的研究 「病気に苦しむことなく元気に長生きし、コロリと死ぬ」ことを意味する“ピンピンコロリ”は長野県発祥の標語です。老化研究は、この標語のように万人が100歳を超えても認知症やがんに罹らず活き活きと生活できる素晴らしい世界を実現し、さらには現代社会が抱える様々な問題を解決する可能性を秘めています。高齢者人口の増加は世界的に進行しており、政策として老化研究の推進を図る国や自治体も増加しています。卒業後は大学、病院、企業で老化研究者、あるいは高度専門職員としてグローバルに活躍し、社会に貢献できます。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像加齢生物学(教授 樋口京一)生後12月齢の老化促進モデルマウス(上) と正常マウス(下)OHOHH10H3COH3COCH3CH3CH2還元型コエンザイムQ10アミロイド線維の電子顕微鏡像糖鎖研究から胃癌の原因を探る糖鎖は核酸、蛋白質に次ぐ第三の生命鎖とも呼ばれ、発生や免疫、がんなどの生命現象と密接に係わっています。当研究室では様々な病気の原因に及ぼす糖鎖の関与を探るため、形態学・分子生物学・生化学・発生工学などの研究手法を駆使して研究を行っています。最近では、胃粘液に含まれている特殊な糖鎖であるαGlcNAcが胃癌の発症を予防していることを明らかにしました。現在はαGlcNAcと胃癌、さらに胃癌の原因菌であるピロリ菌との関係を中心に研究を行っています。そして最終的にはαGlcNAcがなぜ胃癌の発生を抑えているのか、その理由を明らかにすると共に、得られた研究成果を基に胃癌に対する新たな治療法・予防法の開発へと展開させたいと考えています。・αGlcNAcによる胃癌発生の制御機構・ピロリ菌並びにその類縁菌に関する研究・腫瘍における糖鎖並びに糖鎖関連分子の発現解析とその臨床病理学的意義の解明αGlcNAcによる胃癌の制御機構を解明することで、新たな分子標的薬の開発に繋がる可能性があります。また、ピロリ菌に対する新しい抗菌薬を開発することで、現在問題となっている耐性菌の克服に繋がります。病理組織像の解析並びに糖鎖や分子生物学に秀でた医学研究者主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像分子病理学(教授 中山 淳)当研究室では糖鎖と胃癌の関係について常に活発に議論を行っている病理組織標本を画像解析システムによりデータ化しているαGlcNAcを欠損したマウス

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