信大医学部医学科研究紹介2020(日本語版)
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40病理医と検査医が拓く未来を経験しよう当科では病理医、臨床検査医それぞれの立場から各科と関わっています。病理医が行う病理診断は、多くの疾患の確定診断や治療方針の決定に欠くことのできない存在となっています。当科では遺伝子診断を始めとし、様々な最先端の技術をとり入れて病理診断に応用し、的確で有用な診断を提供しています。臨床各科と検討会を開催し、診断精度の向上や要求に応えられるよう努力しています。病理医が果たすべき役割はますます重要になっています。臨床検査医もまた適切な検査の施行、検査の精度管理および臨床医のアドバイスなど、効率よく正しい検査を行うためになくてはならない存在となっています。当検査部でも感染制御など多くの部門で臨床検査医が各科と密な連携をとり医療の質の向上に努めています。研究は以下に示すように、病理学的なものから遺伝子解析や検査全般に及ぶものまで多岐にわたっており、医師、技師問わず、専門性を生かした研究を行っています。・間質性肺炎の発症メカニズムの解明:未だに原因究明が進んでいない特発性間質性肺炎の原因に関して、2型肺胞上皮の培養細胞を用いて検討している。・消化管粘液や消化管幹細胞の分子生物学的研究:消化管上皮の分子生物学的形質発現は癌の発生のメカニズムと関連しており、多くの研究が行われている。・液滴型高速PCR検査の開発と応用:PCR検査を10分以内で行う装置をセイコーエプソン社と共同開発し、感染症迅速検査、悪性腫瘍の診断、抗がん剤の効果予測など幅広い応用の検討を行っている。・IgG4関連疾患の病態解析:臨床病理的解析や病因解明を病理を中心に各科と連携し行っている。・細菌感染症における左方移動の有用性の検討:細菌感染症の診断および重症度を判定できる臨床検査はない。古くから用いられている白血球分画の左方移動に注目した。病気のメカニズムを解明することは、治療法のない病気への治療法開発につながります。研究発表や研究留学を通して世界中の研究者と交流が持てます。病理医の活躍の場は多岐に及んでおり、大学病院、市中病院での病理医だけでなく、臨床と基礎の橋渡し的な立ち位置から、研究者としての病理医の道も選ぶことも可能であり、各自のライフスタイルにあった働き方を選ぶことが可能です。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像病態解析診断学(教授 本田孝行)何としても助けたい 最初に診るのは我々だ命を救いたい、これは医師を志す人なら誰しも抱く、根幹となる思いです。救急集中治療医は、まさにこの思いに直結する診療を行う専門家といえるでしょう。救急集中治療の魅力は、重症な患者さんを治療し救命することにありますが、それは病院内の診療だけにとどまりません。病院の外、例えば災害時の対応、交通事故の現場、あるいは日常の場でも救命に直結する診療ができることは、他の診療科にはない大きな強みです。さらに、複数の臓器が同時に障害され各臓器の専門家には対処が困難、このような時には全身管理の可能な我々の出番です。・院外心停止、心原性ショック症例の予後改善・多剤耐性菌による院内感染の制御方法の開発・敗血症性ショックにおける血液浄化療法の効果についての検討最良の研究とは、現在の治療の問題点を把握し解決することで、最終的に新しい治療法の開発につなげることです。必ずしも救命できる人ばかりではありません。現在の治療にどのような問題点があるのか、また、それはどのように解決できるのか、科学的な思考力が必要です。ただ救命するだけでなく、より良い状態で救命する、救命の質を上げていきたいですね。全身管理の専門家はまだ少なく、どの地域、病院も充足していません。しかし、必ず救急集中治療の必要な患者さんはいます。卒業後もずっと、研鑽を続けながら苦しむ人を助け、献身的にその地域を支えています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像救急集中治療医学(教授 今村 浩)救急集中治療医学教室メンバー災害医療チーム(DMAT)フライト・ドクターとドクター・ヘリコプター

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