信大医学部医学科研究紹介2020(日本語版)
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38胎盤は神秘の臓器周産期・胎盤 班周産期・胎盤 班(チーフ:講師 菊地範彦)(チーフ:講師 菊地範彦)産科婦人科学胎盤は母体と胎児をつなぐ器官であり、酸素や栄養分、老廃物の交換をしているだけでなく、ホルモン産生や免疫にも関与し、胎児発育や妊娠維持に作用していますが、その機能は未だに十分には解明されていない神秘の臓器です。母児の健康を著しく損なう妊娠高血圧症候群(HDP)や子宮内胎児発育制限(IUGR)の主要原因として、妊娠初期の胎盤形成時における絨毛外トロフォブラスト(EVT)の子宮内膜・筋層への浸潤不全が注目されています。そこでEVT浸潤を調節する因子に着目し研究を進めています。これまでに鉄イオン運搬に係るLCN2がEVT浸潤を促進することなどを報告してきました。また、胎盤から分泌されるホルモンなどの様々な生理活性物質のうち、NRG1に着目し、胎児肺成熟を促進する因子の検索や、胎盤絨毛の栄養膜細胞の老化が、ヒトにおける約280日の在胎期間を調節している可能性について研究を行っています。・EVTの浸潤調節におけるLCN2関連因子の機能の検討・胎盤の老化機構に関する研究・胎児肺成熟診断マーカーとしての、母体血中NRG1の有用性の研究妊娠初期のEVT浸潤不全のメカニズム解明から、HDPやIUGRハイリスク症例の選別や予防法の確立に繋がることを期待しています。また私達の研究成果から、新生児予後を大きく左右する早産予知や予防法の確立、さらには胎児肺成熟を促進する因子の解明などにより新生児予後を改善できる可能性があります。このようなことから、妊娠・出産がより安全なものにできると期待しています。大学病院で医師として研鑽しながら研究を続けることができます。また、国内の他の研究機関・医療機関への留学実績もあり、海外留学も含め積極的に支援しています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像【周産期・胎盤班メンバー】チームワークは最高です【細胞培養を行っている様子】機能解析に欠かせない実験手技である【妊娠初期胎盤絨毛組織のCK7(EVTのマーカー)免疫染色写真】下方が脱落膜を示す。EVTが浸潤している様子がわかる生命の重さ、感じませんか生殖・内分泌 班生殖・内分泌 班(チーフ:助教 岡 賢二)(チーフ:助教 岡 賢二)産科婦人科学健康な子を得たいという夫婦の切実な願いを叶えるための、体外受精(IVF)・胚移植(ET)や顕微授精(ICSI)などの生殖補助医療技術は既に身近な医療技術ですが、奇形率や染色体異常発生率が上昇するといった問題があります。特にICSIの成功率上昇や染色体異常発生率低下には良好な精子の選別が必要ですが、これは医師や胚培養士の経験に基づいて行われており、明確な選別基準が存在しません。そこで、私達は精子頭部の形態を数学的に解析することにより、良好な精子を判別できる可能性を示してきました。また、AYA(Adolescent and Young Adult)世代がんにおける妊孕能温存は重要な課題です。私達は、卵巣腫瘍で体外に摘出された卵巣組織から未成熟卵子を採取し、妊娠・生児を得ることも成功しました。また、不妊の原因として大きな位置を占める、子宮内膜症の発症要因としての遺伝子異常についてもの新たな知見として、家族性地中海熱原因遺伝子との関連を研究しています。・精子頭部形態による良好な精子選別法の確立を目指した研究・AYA世代がんにおける妊孕能温存法の改良・子宮内膜症の新たな発症メカニズムの解明精子頭部形態と精子の性状の関係がはっきりすれば、良好な精子を機械計測で自動選別することが可能になり、精子選別精度の向上と均てん化、およびそれによる染色体異常率の低下が図れます。AYA世代がんでの配偶子温存技術の向上から妊孕能温存に希望を残すことは、がん治療に向かう意欲を高めることにも繋がります。大学病院で医師として研鑽しながら研究を続けることができます。また、海外留学や国内の他の研究機関・医療機関への留学も含め積極的に支援します。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像【生殖・内分泌班メンバー】チーフ(愛称は某ネコ型ロボット)を中心に頑張っています【ICSI】【ICSI中】精子選択は経験的に行われるので良いのか?

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