信大医学部医学科研究紹介2020(日本語版)
37/48

35健康に貢献する歯科・口腔外科医療の推進と発信!口腔が司る機能はどれくらいあるでしょうか?口腔は消化管の入り口であり、とても狭い領域ですが、たくさんの機能を有しています。口腔には虫歯や歯周病に加えて口腔がんも発症し、口腔の機能が損なわれ生活の質が低下することもあります。口腔機能の低下は全身の健康にも影響を及ぼします。また、高齢化社会の進行により、多くの病気をもった患者さんが増加しており、このような高齢者の方が安心して歯科治療を受けられるような環境を確立することも必要とされてきています。当教室では、口腔機能の維持・改善、健康余命の延長を目的とした研究を行っています。・口腔と全身との関わりに関する研究・口腔機能の維持・改善を目的とした再生医療の開発・医科疾患の治療を支える歯科・口腔外科治療システム、医療材料及び医療機器の確立・開発・口腔がんにおける機能温存・健康余命延長を目指した治療法の開発口腔は咀嚼、嚥下、発音などの多彩な機能を司る器官です。最近では口腔機能と全身の病気との関連が明らかにされており、口腔機能の維持を図ることの重要性が認識されています。口腔機能の維持・改善により、健康余命の延伸が図られ、生活の質の向上を目指します!歯科治療はもちろん口腔外科治療、摂食嚥下リハビリテーションを含めた口腔のスペシャリストとして、地域医療に貢献するとともに、世界に情報を発信できるリサーチマインドをもった歯科医師を養成することを目指しています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像歯科口腔外科学(特殊歯科・口腔外科)(教授 栗田 浩)安全で安心な歯科治療・口腔外科治療の実践インプラント埋入シミュレーション   唾液検査装置(写真上)   細胞培養(写真下)頭を切らない新しい脳動脈瘤の治療脳血管内治療 班脳血管内治療 班(チーフ:脳血管内治療センター長  准教授 小山淳一)(チーフ:脳血管内治療センター長  准教授 小山淳一)脳神経外科学約30年前にMRIが臨床使用される前は、脳動脈瘤は破裂してから、つまりくも膜下出血になってから治療を行っていました。しかし昨今のMRIの画像解像度の向上により、脳ドックなどで脳動脈瘤は破裂する前に発見されるようになりました。くも膜下出血は死亡率が高く、救命できても重篤な後遺症が残ることがあり、現在では、脳動脈瘤が破裂する前に、安全で根治的な治療が可能となってきました。脳動脈瘤治療には、頭を手術で切る開頭クリッピング術(図1-A)と、頭を切らないカテーテルコイル塞栓術(図1-B)があります。脳血管内治療センターでは、カテーテル治療をより安全に行うための“新しいコイルの開発”と“コイルさえも使わない脳動脈瘤治療”を行っています。・新しいコイルの開発・コイルを使わない脳動脈瘤治療従来の脳動脈瘤塞栓用コイルは径が同じ円管状をしていますが、当センターではコイルに大小二つの径があるコイル(通称Wavyコイル)を研究開発しています(図2)。このコイルには今までない特性があり、脳動脈瘤治療の安全性及び根治性向上が期待できます。また、コイルを使わない新しい脳動脈瘤治療(フローダイバーター治療)が世界で始まっています(図3)。フローダイバーターは治療困難な大型の動脈瘤に高い効果があるので、当センターでも多くの患者さんにより良い治療を提供できると期待しています。日本人は器用で、日本のカテーテル治療は既に高水準ですが、世界のカテーテル治療は日進月歩です。卒業後は、ぜひ皆さんも脳血管内治療分野で活躍して、より安全で根治的な治療を一歩でも前に進め、世界に発信していきましょう。機器開発においても、日本の高い技術力が後押ししてくれるはずです。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像図3:フローダイバーター  A:大型の動脈瘤(点線の円) B:フローダイバーター(黒矢印)を留置 C:コイルが無くても瘤の縮小・消失が期待できる図1 A:開頭クリッピング図1 A:開頭クリッピングB:カテーテルコイル塞栓B:カテーテルコイル塞栓図2 従来型のコイル図2 従来型のコイル開発中のWavyコイル開発中のWavyコイル脳動脈瘤脳動脈瘤クリップクリップコイルコイル

元のページ  ../index.html#37

このブックを見る