信大医学部医学科研究紹介2020(日本語版)
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33機能脳神経外科は、脳神経外科医による脳科学の応用分野です機能的脳神経外科 班機能的脳神経外科 班(チーフ:講師 荻原利浩)(チーフ:講師 荻原利浩)脳神経外科学脳組織は部分ごとに機能が決まっています。病気によって機能が障害された場合、その病気を治すことはもちろん重要ですが、それ以外に、障害された機能を回復させたり、機能を温存したりする技術が必要で、そのような分野が機能脳神経外科です。パーキンソン病は神経難病の一つで薬物療法が主な治療法ですが、脳の深部に電極を埋め込んで刺激をすると、より楽に生活できるようになる患者さんがいます。てんかんも薬物療法が主な治療法ですが、てんかんを起こす焦点を同定し、その部分を切除することで発作を抑えることができる患者さんがいます。・不随意運動、寡動・神経疼痛、痙性麻痺・てんかん・三叉神経痛、片側性顔面けいれん神経の機能は脳波や筋電図を使って解析することで病気を判断することが多く、このため生理学や電気に対する知識が必要です。臨床研究も動物実験もこれら知識を統合して行われます。機能脳神経外科は最も脳科学に近い分野です。脳科学の発展のためには、人間の脳の機能(電気活動)をできるだけ詳しく知ることが重要です。人間の脳を直接治療できるのは脳神経外科だけです。医学部卒業後、2年間の臨床研修プログラム終了後、脳神経外科を選択します。4年間の後期臨床研修プログラム終了後、脳神経外科専門医を取得します。その後自身のサブスペシャリティとして機能脳神経外科を選択します。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像脳深部刺激術のシェーマ。脳内の電極に持続電気刺激を行う(メドトロニック株式会社提供)運動誘発電位脳表に電極を設置し(左)、運動野を刺激することで筋を動かす運動誘発電位(右上段)と手足に電気刺激を与え、その信号が脳に伝わることを記録する感覚誘発電位(右下段)を記録感覚誘発電位脳深部電極設置術中の写真。頭蓋に小孔をあけ、深部電極を脳内に穿刺挿入する脳表電極最先端の脳神経外科技術を集めて治療に取り組んでいます髄内腫瘍 班髄内腫瘍 班(チーフ:講師 荻原利浩)(チーフ:講師 荻原利浩)脳神経外科学脳腫瘍のうち脳そのものに発生する腫瘍を髄内腫瘍と呼んでいます。髄内腫瘍は、様々な機能を司る脳そのものに浸潤して大きくなる特徴があります。主な治療方法は摘出とそれに引き続く放射線治療、化学療法ですが、治療で最も重要になるのは摘出率です。腫瘍を、脳との境界ぎりぎりまで摘出しようとすると、周囲の脳損傷が起きる可能性があります。術後の神経障害を生じさせない範囲で最大限の摘出を行うことが求められます。 ・術中電気生理モニタリング、マッピング・覚醒下手術・手術支援装置、手術器具の開発神経の障害の程度を術中に判断する技術と、より正確に安全に手術操作できる技術が、機能温存下での最大限の摘出を可能にし、治療成績を向上させます。信州大学病院では、この理念を実現するための術中MRIと、手術支援装置の作動状況を統合する次世代手術室(スマート治療室)を建築中で、平成30年度から稼働予定です。医学部卒業後、2年間の臨床研修プログラム終了後、脳神経外科を選択します。4年間の後期臨床研修プログラム終了後、脳神経外科専門医を取得します。その後自身のサブスペシャリティとして脳腫瘍を選択します。 主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像共同研究を行っている東京女子医科大学に設置されている次世代手術室のデモ室(AMED共同研究による)覚醒下手術(脳機能温存を確認しながら腫瘍摘出を進める。患者さんはモニターを見ながら質問に答える。摘出の範囲はナビゲーションで確認する)

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