信大医学部医学科研究紹介2020(日本語版)
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23日本の未来を担うこどもたちのための明日につながる研究代表的な研究についてご紹介します。◆がんを標的とする人工T細胞受容体(キメラ抗原受容体;CAR)をT細胞に遺伝子導入し、その遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)を体外で大量培養後に患者に投与する治療法(CAR-T療法)を開発しています。CAR-T療法は急性リンパ性白血病・悪性リンパ腫を対象に臨床応用されていますが、当教室では急性骨髄性白血病と小児固形がんに対する新規のCAR-T療法を開発しています。◆生分解性リポソーム(ナノカプセル)を使った、新しいがん遺伝子治療の研究をしています。遺伝子治療は、ウイルスベクターの製造や安全性の確保が課題となっていますが、生分解性リポソームを活用することで、ウイルスを使わずに治療遺伝子を目的の細胞に届けることができます。・CAR-T細胞によるがん免疫療法・生分解性リポソーム(ナノカプセル)によるがん遺伝子治療基礎的な研究を通して、病態解明や治療法の応用により根治的になりうる治療法の開発やこどもの長い将来を見据えたより安全性の高い治療への礎となる研究を行っています。また小児医療の発展に貢献できるエビデンスを蓄積し発信する目的で、多くの臨床研究も各専門グループで行っております。明日につながる研究に全力に取り組んでいます。教室では常に疾患の本質、病態を考えながら研究しており、教科書的な理解から本質をとらえた真の理解する力がつきます。考える力をつけることでその先の臨床医や研究者として大きな飛躍が期待できます。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像小児医学(教授 中沢洋三)【CAR-T療法】CAR遺伝子の導入には当教室が開発した非ウイルス遺伝子導入法が用いられています。この方法は低コストで簡単な遺伝子治療を実現可能とするため、国内外から高く評価されています  【がん遺伝子治療】治療遺伝子をがん細胞に運ぶためのドラッグ  デリバリーシステム(ナノカプセル)を産学連携で開発しています次世代の悪性黒色腫治療を目指して!当研究室では、主に“ほくろの癌”である悪性黒色腫の診断方法・病勢の評価方法・新たな治療法について研究しています。悪性黒色腫は、進行してしまうと治療が難しいため、早期の診断と治療が非常に重要です。しかし、ほくろと区別するのが難しいため、早期の診断が難しい場合が多く、早期診断の手助けになる画像を用いた新しい方法や検査をしにくい爪の病変をより簡便に調べる方法などを研究しています。悪性黒色腫に対して免疫checkpoint阻害薬や分子標的薬という新しい薬剤が、他の癌に先駆けて使用することが可能なり、とてもホットな研究対象になっています。免疫checkpoint阻害薬と降圧剤(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬:ARG)を用いた新しい治療法についても研究を行っています。・リキッドバイオプシーを用いた悪性黒色腫患者の病勢評価法の確立・降圧剤(ARB)併用化学療法による悪性黒色腫治療の検討・RGB値を用いた悪性黒色腫の画像診断法の構築・爪甲内メラニン測定による非侵襲的診断法の確立悪性黒色腫は、最新の免疫checkpoint阻害薬でも有効率が20-30%程度で、薬物治療が難しい癌です。当研究室で得られた知見が新しい早期診断の方法や新しい治療法の基礎を確立することによって、将来的に難治性の悪性黒色腫の治療に貢献できると考えています。当研究室に留まり研究を継続することはもちろん、海外・国内の研究施設に留学することもできます。研究内容が臨床に近いため、研究で得られた知識が診療に役立つ場面も多くあります。皮膚科は、女性医師も多く、診療・研究・家庭を両立し、活躍している卒業生も多くいます。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像皮膚科学(教授 奥山隆平)    普段の実験室の様子。大学院生も活発に実験を行っています    フローサイトメトリーなどの実験機器も豊富に揃っています  海外からの留学生も活躍しています  実験は一緒に行いながら指導します 上:ホクロ、下:悪性黒色腫 違いがわかりますか?

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