信大医学部医学科研究紹介2020(日本語版)
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12子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)~未来のこども達への贈り物~「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」を2011年より実施しています。日本中で10万組の子どもたちとそのご両親に参加していただく大規模な調査です。「エコロジー」と「チルドレン」を組み合わせて「エコチル調査」と言います。赤ちゃんが13歳になるまで、定期的に健康状態を確認し、環境要因の子どもたちの成長・発達への影響を調査します。調査の結果、子どもたちが健やかに成長できる環境、安心して子育てができる環境の実現を目指します。2019年からは8歳学童期調査が始まりました。これまでの調査結果から様々な研究が進んでいます。・妊婦の飲酒と胎盤異常の関係 ・妊婦の飲酒と先天奇形の関係・妊婦の殺虫剤の使用と新生児黄疸の関係・妊娠中の自宅内装工事と児の先天奇形の関係・妊娠中の肥満と児の発達異常との関係・母の就労と児の身体発育の関係・重金属、微量元素と神経発達症の関係エコチル調査の結果にもとづき、子どもの成長や健康に影響をあたえる原因が明らかになります。明らかになった原因物質について有効な対策を立てることで、子どもたちが健やかに成長できる環境、安心して子育てができる環境の実現を、未来に向けて実現することができるようになります。・医学部を卒業後、衛生学、公衆衛生学の予防の領域で活動する医師になることができます。・調査結果を活かす小児科医や産婦人科医として活動ができます。・調査研究を行う研究者としての医師として大学教員や研究者になることができます。現在進行中の研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像衛生学公衆衛生学(教授 野見山哲生)【調査で明らかにしたいこと】子どもの健康に影響を与える化学物質などの環境要因と健康への影響を調査【調査の流れ】赤ちゃんが13歳になるまで調査を行い、成長発達に影響を与える環境要因を解明法医学は死因究明に関する社会的責務を果たしています高い精度で個人の身元確認が可能なDNA鑑定ですが、死後長時間が経過しているご遺体や高度損壊のご遺体からは状態の良いDNA試料が得られず、個人識別が困難となります。そこで、このような劣化したDNA試料からでも十分な身元確認を行うための分析技術の開発に、日々研究を重ねています。これまで、この技術を応用して分析を行い、世界で初めて縄文時代人のY染色体系統分類に成功しています。このほか、一見健康そうな人が突然亡くなる「突然死」のなかで、高齢者突然死と老人性全身性アミロイドーシスの関連、あるいは向精神薬服用者の突然死の原因究明についても研究を進めています。・DNA劣化試料に対する分析法の確立と鑑定精度の向上・SNP解析によるY染色体系統分類法・高齢者突然死と老人性全身性アミロイドーシスの関連性・向精神薬服用者の突然死と遺伝子変異の関連性法医学が担っている死因究明業務は、社会的に極めて重要な責務と位置付けられています。そして、精度の高い死因究明を実践していくためには、法医学研究の一層の発展が必要であることは言うまでもありません。将来的に法医学を専攻する医師の場合、法医認定医や法医指導医の資格を取得し、死因究明の最前線で活躍することができます。また、医師でなくても、DNA分析や薬物分析の技術専門者として活躍する場が多くあります。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像法医学(教授 浅村英樹)母親子供父親他人親子鑑定例心筋への広汎なアミロイドの沈着G1927A(G643S)向精神薬服用者急死例の半数近くで特定の遺伝子の変異が認められた

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