環境報告書2020
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私は工学系研究科機械システム工学専攻を卒業後、総合水事業会社の水ing株式会社へ入社しました。水ing株式会社は、水処理のパイオニアとして様々な施設の設計・建設、メンテナンス、運転管理や、研究・開発、官民連携事業、PFI事業を担ってきた会社です。現在は、水ing株式会社より建設事業・メンテナンス事業を包括承継して発足した水ingエンジニアリング株式会社に所属しています。入社後は、工事部で浄水場、下水処理場の更新工事に携わり、その後、機器設計・開発部で主に下水処理機械の沈砂移送装置の設計・開発に取り組んできました。沈砂移送装置は、下水処理過程で最初に下水が流入する沈砂池において、沈砂を集めるための集砂装置と集めた沈砂を沈砂池から除去する揚砂装置で構成されます。弊社の保持する技術としては、集砂装置として、圧力水をノズルから噴射することで砂を集めるノズル式集砂装置と、集めた砂を真空を利用して配管輸送する真空揚砂装置を組み合わせた、低動力で高揚程を可能にした真空移送システムがあります。近年、気候変動の影響で日本国内においても集中豪雨が増加しています。その結果、下水処理場に流入する下水の増加とともに砂や石等の流入量の増加や、通常よりも大型の流入物が流入する場合があり、機械の処理機能に悪影響がでる可能性があります。このような状況でも、処理機能が低下しない沈砂移送装置の設計・開発に取り組んできました。ノズル式集砂装置は、多量の砂が流入すると、ノズルが砂で埋没し、著しく集砂能力が低下することが想定されます。また、真空揚砂装置は、輸送配管口径を大きくすれば大型の流入物を輸送可能になりますが、一方で輸送量が減少し、揚程が低くなる懸念がありました。このような難しい問題が多くありましたが、様々な失敗と工夫を重ねることで何とか解決させることができました。今後、この開発技術が下水処理場に納入され、集中豪雨等によってもたらされる社会問題の解決につながればうれしく思います。学生時代を振り返ると、環境教育の授業があり、教員の方が積極的にエコバッグを使用して手本を示し、キャンパス内の細かいゴミ分別でも皆ルールを守っていたことが思い出されるので、環境マインドが自然と醸成される環境だったと思います。今後、学生の皆さんがどの業界で働くにしても、環境問題には常に向き合っていかなければならないと思いますが、上記のような些細な事を当たり前にできる環境で育った信大生ならばきっと社会に良い影響をもたらすことができると考えます。一緒に頑張っていきましょう。現在の仕事と環境問題とのかかわり環境と生きる人づくり(OB・OGの環境活動)水ingエンジニアリング株式会社 出本 卓也さん出本 卓也・いでもと たくや2012年 信州大学大学院工学系研究科機械システム専攻修了2012年 水ing株式会社 入社2018年 水ingエンジニアリング株式会社 転籍特 集沈砂移送装置 真空移送システム10

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