信州大学統合報告書2020
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活動実績ガバナンス人と地域の資産財政情報ビジョンと経営戦略01ビジョン・経営戦略VISION2030川﨑:池上さんに、大学運営についても伺います。池上さんは、国立大学でも私立大学でも教えていらっしゃいますが、国立大学が外部資金を集めていくためにはどうすればいいとお考えですか。池上:国立大学だけでなく、実は私立大学も同じような状況なんですよ。私立大学だって、そんなに経営が上手な訳ではないんです。私立大学も「学生が納めるお金」と「私学助成金」でほとんど賄っている。しかし、ここへ来て突然、外部資金を投入しなければいけない、大学も稼がなければいけないということになり、戸惑っているのは、実は、国立も私立もあまり変わらない。ではどうしたらいいのか―。一つは、地元に密着した、地域にとって絶対に必要な機関である、という思いを、多くの人に持ってもらうことが必要です。同時に「信州大学では地域経済にこんなにも役に立つ新たな研究や活動が行われているんだ、じゃあそこに投資をすれば何らかのリターンもあるんじゃないか」という、投資目線で援助を受けられる仕組みを充実させることも必要でしょう。 信州大学のように、70年の歴史があれば、当然、大勢の卒業生がいるわけで、その卒業生たちから「母校のためなら」と寄附を集めることもできる。そのための卒業生のネットワークを維持、発展させていくための工夫も重要ですよね。川﨑:濱田学長はどう思われますか。学長:本学も「知の森基金」という基金を立ち上げました。地元の企業を中心に、寄附金を募っています。地元企業に対する目標値は、年間1千万円。毎年同じ額を寄附して欲しいという要望をしています。毎年継続的に寄附して頂くことで、学生の海外派遣や、経済的に困難な学生への支援ができるようになっています。 それと同窓会などの組織の維持ですが、私も非常に重要だと思います。多くの卒業生は、出身の学部に強い思い入れがあることが多い。卒業生の気持ちに寄り添った寄附金募集のシステムを、今構築している所です。池上:信州大学は、特に「長野県民全員がステークホルダーなんだ」という意識が必要じゃないか、と思います。 例えば、長野県に住んでいる子供が東京や関西の学校に進学する。その子は信州大学に進学したわけじゃないから関係ないと思うかもしれないけれど、実は、信州大学の教育学部出身の教員たちが育てた子どもさんかもしれない。信州大学の卒業生が長野県の経済、信州の教育に貢献している。そういう意味で長野県の企業や組織、ひいては長野県民全員が信州大学のステークホルダーなんだと思いますね。学長:ありがとうございます。我々もそうした意識で取り組んでいきたいと思っています。 もともと市民向けの「公開講座」もかなり活発にやってきました。あと信州大学の教員が各地に出向く「出前講座」も、多くの自治体から要望を受けて実施しています。そこでも長野県内のさまざまな方と接点が持てていますので、今後も拡大していけるように努力したいですね。池上:「信州人」はかなり勉強への意欲が強く、勉強熱心な人が多い気がします。信州大学はその期待に応えていくべきだと思いますし、コロナ禍で人を集めることがなかなかできないのであれば、出前講座自体をリモートで行うのもいいかもしれないですよね。学長:それはぜひ行いたいですね。教育だけではなくて、研究活動も方法を変えなければいけない部分がたくさんあります。今後は大学全体のDXにも取り組んでいきたいと思っています。大学運営と外部資金獲得はステークホルダーの目線で考える長野県民全員がステークホルダー、信州唯一の国立大学として「長野県民全員がステークホルダーなんだ」という意識が信州大学には必要じゃないか、と思います。(池上)Integrated Report 2020 Shinshu University17

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