信州大学統合報告書2020
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Shinshu UniversityIntegrated Report 2020ONLINE対談|信州大学が目指すVISION2030とSDGs信州大学長 濱田州博×ジャーナリスト 池上彰氏川﨑:変化のスピードが速い時代だという話がありましたが、目標達成をきちんと検証していくことも必要ですよね。信州大学が目指す方向性を、ここで学長がグランドデザインとして掲げたということは、今、まさに大学が大きな目標に取り組めるタイミングだと感じられているということですよね。学長:ええ。今後は「VISION2030」を元に、第4期の中期目標に落とし込み、実践していくことになると思います。中期目標・計画は達成されたかどうかの検証をきちんとしておりますので、そこで「VISION2030」の評価・検証もできると考えています。もちろん、途中経過の検証も必要だと思っています。池上:そうですよね。作ったきりじゃなくて、きちんと達成度が検証できるような仕組みを。また「10年後、2030年の大学関係者によって検証される」という緊張感を持っていた方がいいですよね。学長:おっしゃる通りだと思います。川﨑:掛け声だけじゃなくて、それをどう実現していくのかという強い思いが大事だということですね。「VISION2030」は、まさにSDGsの理念に近いものがあると感じたのですが、どんな思いを込めてこれらをお作りになったのか、簡単にお話し頂けますか。学長:このビジョンを策定するにあたって「信州で学ぶ」とはどういうことなのかを意識しました。信州大学のアイデンティティ、つまり理念や価値を大事にしなければ、信州大学がある意味がなくなってしまうという危機感も感じていたからです。特にコロナ禍の中、懸念されるのは、リモートによる良い教育コンテンツがたくさん作られたことで、世の中が「それで全部済ませてしまおう」という流れになることの危惧です。こうした時代だからこそ、やはり「信州で学ぶ」ということの意義を、我々がどう捉えるかが重要なことだと思うのです。ビジョン1項目の「信州を学び…」という言葉には、そうした思いを強く込めました。 また、もともと、大学は「未来のことを作るところ」だと私は考えています。もちろん、今の課題にも当てはめて考えていく必要はありますが、大学は、未来を見据え、いずれ役に立つ何かを突き詰める「未来を作る」ための場所でもあります。そこに、現代社会とのギャップが多少あるのは仕方がない。しかし、社会が進む方向と、大学が進む方向に大きなギャップがあっては本末転倒です。社会が進む方向と大学が目指す未来を見据えた上で、投資家の方が信州大学の将来を期待して、投資して頂けたらと考えています。池上:私が学生時代のころから、信州大学はいわゆる「タコ足大学」という言い方をされていました。7つの高等教育機関を前身校に持ち、キャンパスが全く別々で、本当に各キャンパスが切り離されているイメージがあったんですよね。ところが、今はキャンパスを繋いで通信すれば、授業だけでなく、様々なことができるようになってきた。「タコ足」が、今度は強みになったのだと思います。 また、信州大学は県や各市町村と多くの連携協定を結んでいますよね。各地にサテライトの拠点もできましたし、本当にいい意味で信州大学の長野県全体の中で占める位置が、強く、大きくなってきたと思います。とりわけ、長野県のちょうど真ん中の松本市に信州大学の法人本部があることも、地の利を得ていますよね。学長:本学が「地域貢献度の高い大学」だと言われるのは、長野県各地に実際に信州大学の関係者がいることが大きいと思っています。リモートの時代であっても、そこに実際に教職員・学生がいて、そこに暮らす人と直接的な接点が持てるというのは、やはり重要です。飯田市と岡谷市にもサテライトキャンパスがありますし、軽井沢町にもオフィスを設けました。今後もそうした各拠点を活用しながら、それこそ“タコ足”を“イカ足”(笑)にするぐらいの発想の転換が重要なのではないかと思っています。これまではデメリットばかり強調されましたが、それをメリットに転換できるDX環境が、今整ってきた、と感じています。DX(※3)は信州大学の強み、分散型キャンパスがさらに進化する「信州で学ぶ」ということの意義を、我々がどう捉えるかが重要。世の中が「リモートで全部済ませてしまおう」という流れになることを危惧しています。(学長)(※3)デジタルトランスフォーメーションIntegrated Report 2020 Shinshu University16

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