信州大学統合報告書2020
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活動実績ガバナンス人と地域の資産財政情報ビジョンと経営戦略01ビジョン・経営戦略VISION2030によって課題が変わる。同じ教育を全く違う場所に持って行っても、多分うまくいかない。場に応じた教育をきちんとやっていかなければと、強く感じているところです。池上:教育に関連して言うと、私が大学に入った年は、ちょうど東京大学と東京教育大学の入試がなかった年。慶応大学に入ったらいきなりストライキで、キャンパスがバリケード封鎖されました。信州大学も当時バリケード封鎖されていましたよね。いきなり授業がパタッとなくなってしまったんです。 ただ、そのことがあったからこそ「自分自身で勉強する」という習慣が身に付いたと思います。考えてみれば、大学とは4年ないし6年間で、社会に出てからも自ら勉強していく、生涯にわたって学ぶ力を付ける場所でもありますよね。大学在学中にそれができるようにきちんと教えていくことが、今改めて必要になってしまったのだなと、そんな風に思います。学長:全く同感です。今年の1年生にも卒業後も学び続けるための方法論を大学では身に付けて欲しい、という話をした所でした。学び続けようとする姿勢が今まさに重要ですよね。池上:また、大学は「知識の伝達」というとても大事な役割を持っています。でも知識というものは、特に理系だとすぐ陳腐化してしまうものもあります。知識の伝達だけでなく、知識を自ら獲得する、あるいは獲得した知識を運用していく運用力を持つ必要があります。そうした力を養う大学の役割が、より大事になっていますよね。池上:このコロナ禍で、多くの人が不安を抱えています。その中で、松本に信州大学の附属病院があることは、地域の人の大きな安心感につながったのではないかと思います。濱田学長に附属病院の今の状況をお聞きしたいのですが、どうですか。学長:長野県内の大学病院は信州大学医学部附属病院(以下信大病院)しかありません。信大病院は感染症の指定病院ではないので、コロナにかかった方が来院するわけではないのですが、重症者は我々のところに運ばれてきます。信大病院は、もともと「体外式膜型人工肺ECMO(エクモ)」を所有していますし、長野県内でエクモを使用する重症患者を受け入れる必要がありますので、「医療の最後の砦」としての役割を担っていると言えます。 また、これまでも信大病院から県内各地の病院に医師を派遣してきました。信大病院は、長野県の医療に対して大きな影響を与えていると同時に、その責任の重さを強く感じているところです。池上:本当に、今回は信州大学の存在価値が、医療という面からも県民から再評価されることになったのではないかと思いますね。川﨑:こうした未曾有の事態に陥って「地域を支える」という役割がさらに大きくなったのではないでしょうか。川﨑:信州大学の「VISION2030」について、話を進めたいと思います。信州大学は昨年創立70周年を迎えたとき「VISION2030」を発表しました。信州大学の狙いを改めて教えてください。学長:2030年は、SDGsのゴールの年でもあり「VISION2030」もそれに合わせました。それに今は時代のテンポが非常に速い。例えば2050年といった目標を掲げても時代に即した目標にはならないかもしれない。だからやはり、ここ10年位をターゲットに据えて取り組んでいくことが一番ではないかと考えました。アフターコロナの時代になれば、さらに社会が変化していくと思います。我々も時代の変化に合わせて変わっていかなければいけないという思いを強く込め「VISION2030」を掲げました。コロナ禍と信州大学、地域医療の存在感と責任ESG投資家に見て欲しいVISION2030の描く未来教育は、受ける場によって課題が変わる。「場」に応じた教育が必要。同じ教育を全く違う場所に持って行っても、多分うまくいかない。(学長)Integrated Report 2020 Shinshu University15

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