信州大学統合報告書2020
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ビジョンと経営戦略01ビジョン・経営戦略VISION2030活動実績ガバナンス人と地域の資産財政情報 もちろん授業は対面がいいに決まっていますが、大教室で「質問は?」と言っても、なかなか質問が出ないことが多い一方、Zoomのチャット機能だと、次々と質問が来る。意外と「双方向性」という点では、これまでにできなかった授業、教育ができたのかな、と思いましたね。 信州大学では毎年夏に経法学部の集中講義を行っていますが、今年は200人収容の教室に、100人だけ間隔を置いて座り、残りの学生はZoomで授業を受ける、というやり方にしたんです。そうしたら今年は質問がよく出ましたね。学生たちが対面の授業を待ち望んでいたように感じました。「このやり方がよかった」というよりは、前期、キャンパスに足を踏み入れることができなかった不満が一挙に噴き出したのかなと、そんな風にも思いました。川﨑:ありがとうございました。濱田学長、今の信州大学の状況はいかがですか。学長:池上さんもおっしゃったように、リモート授業もやり方次第でいい点が当然あったように思います。反面、特に1年生に対しては課題を感じました。ついこの間、私が学生向けに話をした時もやはり「なかなか友達ができない」とか、松本で初めて一人暮らしになって「孤独だ」といった悩みを抱える学生がいました。授業については、今回のことでいろいろな方法論があると思いましたが、この状況下で、いかに気持ちを一緒にできる場を整えるか、が、今後の課題のように感じたところです。池上:そうですね。大学とは研究の場、教育の場であるわけですけど、学生にとっては勉強の場。学生同士知り合って友人になり、そこでいろいろな議論を交わす、そうした「場」が大学ですよね。皆が集まる「アゴラ(※1)」とでもいいましょうか、そうした役割を、実は大学は果たしている、それが今年は十分果たしきれなかったですよね。川﨑:そうですね。確かにオンラインで「アゴラ」ができるかというと、そうでもないですよね。学長:信州大学は全国各地から学生が集まっていて、長野県出身者は約25%しかいない。その多様性の特徴が、今年は活かせなかったのが残念です。池上:そうですよね。今回、統合報告書の素案を拝見し、長野県以外から来る学生がこんなにも多いんだと改めて感じました。でもいいことですよね、出身地が偏った状態だと、どうしても多様性が薄れてしまう。この強みを活かしていくことが、大事ですよね。学長:我々も、それが一番重要だと思っています。長野県出身者が約25%と申しましたが卒業時には40%近くの学生が長野県内に就職するのです(※2)。県内の若者人口を増やすという意味でも、大学の役割は大きいと思っています。また、大学というのは、い濱田州博信州大学長学生にとっては友人といろいろな議論を交わす「場」が大学。皆が集まる「アゴラ」が役割を果たせなかった。(池上)(※1)アゴラは、古代ギリシアの都市国家において重要な公共空間として人が集まる広場を指すギリシア語。1959年兵庫県生まれ。1982年東京工業大学工学部卒業。1987年同大学院博士課程修了。1987年通商産業省工業技術院繊維高分子材料研究所研究員。1988年信州大学繊維学部助手。1996年同助教授、2002年同教授、2010年繊維学部長、2012年副学長を経て、2015年10月より現職。(はまだ くにひろ)13

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