保健学科_研究紹介2020
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―26―理学療法学専攻リハビリテーションやスポーツにおける運動の制御や学習のしくみを科学する 病気やけがによる運動障害、スポーツにおけるけがや使い過ぎによるスポーツ傷害、加齢による身体能力の低下などの予防と改善を通して、その人らしい生活を送っていただくよう、運動の制御や学習のしくみ、そして、より効果的な理学療法としての治療法についての研究を行っています。具体的には、筋電図や磁気センサーなどを用いた人の動きの特性や、それに関連した脳の活動状態の特徴などを指標として、新たな測定方法の開発や、できるだけ安全で効果的な運動のあり方について研究しています。また、これらの研究を通して、新しい測定装置やトレーニング機器の開発も行っております。そして、学会や論文を通して、それらの研究成果を社会に向けて発信しております。 より適切な測定方法や、より安全で効果的な運動のしかたを、様々な測定方法を駆使して科学的に検証し、それを学会発表や学術論文を通して社会に発信することによって、リハビリテーションの対象者の方々や、スポーツ選手の方々に対する新たな測定方法、治療方法、運動指導方法として提言していくことが可能となります。そのように「社会の役に立つ研究成果」を発信することの醍醐味を体験してください。 研究活動で修得した研究能力や論理的な思考力は、卒業後における保健、医療、福祉の現場や、教育・研究機関、そして、スポーツ現場など様々な領域における実践と研究を結び付けていくための能力として生かしていくことができます。基礎理学療法学研究から広がる未来卒業後の未来像人が足を挙げる際の体幹の筋群の活動を、フットスイッチ、表面筋電図、超音波画像診断装置などを用いて客観的に解析している場面川崎リハビリテーション学院、工学院大学卒業。韓国順天郷大学校工科大学修士課程、信州大学大学院工学系研究科博士後期課程修了。1993年に信州大学に着任。木村 貞治 教授スポーツにおける足首の捻挫を予防するためのトレーニングの効果を、足首の動きの速さや筋肉の反応の速さ、そして、脳の活動状況を指標として解析している場面障害を有する方が、注意の払い方によって歩き方がどのように異なるかを小型のモーションセンサを用いて解析している場面立ち上がり動作は日常で頻繁に行われる動作で、人は自然に効率の良い動作速度を選択しているが、なぜその速度に決まるのだろうか。筋トルクの角力積は遅い起立で大きくなり、速い起立で小さい。逆に相互作用トルクの角力積は遅い起立で小さくなり、速い起立で大きくなる。従って、快適速度の起立がちょうどよい。理学療法学専攻目標とする理学療法士:臨床に還元できる研究を行う理学療法士 理学療法の基礎として人の動きを解析する分野があります。私の研究室では三次元解析装置や床反力計、加速度計、ジャイロセンサーを用いて人の動きを客観的数値としてとらえ、なぜ、人の動きが効率的なのか等を力学の視点も含めて研究を行っています。 また、臨床的観点としては理学療法の治療効果の検証を身体活動量の観点からとらえることを始めとして、基礎として明らかにした加速度計などの評価方法を用いて応用することにも取り組んでいます。また、根拠に基づいた治療を行うためには、治療を決定する評価法を開発し、その評価結果に基づき治療を行った時の効果の検証も視野にいれて、研究を行っています。信州大学医療技術短期大学部卒業、理学療法士免許取得。放送大学教養学部卒業、東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻修了(博士・障害科学) 2004年に保健学科理学療法学専攻に着任。百瀬 公人 教授 人の動きを客観的に計測できるようになることで、人の動きが理解できるようになります。それは正常な運動機能を持つ人だけではなく、障害を持った人の動きに対しても同様のことができます。これらのことを踏まえて、理学療法及び医療としての治療を考えることで、あらゆる状態の病気や、障害を持って苦しんでいる方々への手助けとなる新しい方法を発展することができると考えています。 理学療法学専攻を希望する皆さんは、臨床現場で働く理学療法士を想像していますよね。しかし、臨床現場の理学療法は、まだ根拠が十分に明らかにされておりません。患者さんに根拠に基づいた治療を行うためにも大学院に進学して研究する力を付けましょう。基礎理学療法学研究から広がる未来卒業後の未来像

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