保健学科_研究紹介2020
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―20―検査技術科学専攻顕微鏡下に広がる細胞・組織の変化を捉える 病理組織標本にみられる細胞・組織の変化の意味や生物学的態度に思いめぐらすことはとても興味深いことです。現在では、細胞・組織の形態変化の背景にある物質や遺伝子の異常を組織標本上で捉えることができます。私たちは消化管粘膜の上皮細胞に類似した細胞から構成されている腫瘍が消化管以外にも発生することに注目して、その診断に有用な物質や診断の基準を研究しています。ピロリ菌はヒトの胃粘膜に棲息し、胃の悪性腫瘍の主たる原因と考えられていますが、ピロリ菌に似た別種の細菌がヒトや動物の胃粘膜に棲息していることが注目されています。これらの細菌の研究にも取り組んでいます。信州大学医学部医学科卒業後、信州大学医学部附属病院臨床検査部を経て、信州大学医学部保健学科検査技術科学専攻に着任。太田 浩良 教授 正常組織や腫瘍組織において特定の細胞に発現している物質や発生する組織が異なっていても構成細胞が類似している腫瘍群においては発現が共通している物質があります。これらの物質には臨床検査としての利用や治療法に応用できる可能性を秘めたものがあります。ヒト胃粘膜に棲息するピロリ菌類似の細菌による胃疾患の発症機構の解明は胃疾患の治療や予防にも繋がります。 細胞や組織の変化として病気のイメージを捉えられることは、医療のあらゆる分野で大いに役立ちます。また、病気が発生する分子機構と細胞・組織の形態変化の両者を統合して考えることで病気の理解を深めることができます。生体情報検査学研究から広がる未来卒業後の未来像(Helicobacter heilmannii s.s.)(Helicobacter felis)胃腫瘍膵腫瘍肺腫瘍子宮腫瘍検査技術科学専攻非侵襲的、且つ簡便な生体情報検出機器の開発と検証を目指して! 生理学、呼吸機能検査実習、医用電子工学、医用センサ工学の授業を担当しています。また、呼吸器内科専門医、アレルギー学会専門医として附属病院で外来診療をおこなっています。研究対象は呼吸器疾患および睡眠呼吸障害の病態ですが、繊維学部、工学部、一般企業と共同して、非侵襲的、且つ簡便に生体情報を得るための機器やシステムを共同開発しています。今、おこなっている共同研究としては、光電式容積脈波計を用いた連続血圧および血糖モニタ-装置の開発、Fiber Bragg Grating (FBG)センサを用いたウェアラブルバイタルサイン測定システムの構築と検証、超小型装着型酸素濃縮器の開発などです。また、大学生の過眠症についても研究をおこなっています。 今後は高齢化に伴い地域包括的ケアシステムの構築が進む。その中で、非侵襲的に身体の情報が簡便に得られることによって、病気の早期発見や治療経過の観察、さらには健康の維持や健康増進のための1つのツールとなり、これが健康寿命延伸に繋がることを期待している。例えば、センサの編みこまれた衣服を身に着けるだけでバイタルサインが日々データベースに蓄積され、ケアシステムで管理されるような時代が到来するのでは。 卒業後は、臨床検査技師として地域の中核病院に勤務されることが多いですが、医療機器メーカーや臨床工学士の道を選ぶ人もいます。大学で学んだ知識と技能を生理機能検査や医療機器開発に生かし、医療の発展に寄与していただきたい。生体情報検査学研究から広がる未来卒業後の未来像図1.バイタルサインシステムのプロトタイプセンサの完成予想図。 図2.光電式容積脈波計による血圧・血糖値測定。 図3.新規開発した小型携帯型酸素濃縮器。 図4.背中に背負って歩行している場面。図5.運動負荷試験をおこなっているところ。脈波センサ(容積脈波)から得られる情報と応用Fiber Bragg Grating(FBG)センサの装着デバイスの医療応用への展開信州大学医学部医学科卒業。信州大学医学部内科学第一教室に入局。医学博士を取得後、米国南アラバマ大学生理学教室に留学。内科学第一教室准教授を経て、平成20年に現職教授となる。藤本 圭作 教授図1図2図3図4図5

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