保健学科_研究紹介2020
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―11―看護学専攻成人・老年看護学領域死から生を問いなおす数字でとらえきれない現象をとらえる 自らの死に臨む人や、大切な人を看取って死別の悲しみを体験する人を、社会でどう支えていけるでしょうか。こうした現代社会の死生に関する問題を、「社会学」や「死生学」といった学問を枠組に研究しています。担当科目「医療社会学」では、学生と一緒に県内の終末期ケアの現場を見学し、スタッフの方にお話を伺ったこともあります。また、市民団体の活動に参加し、死別体験者を支援する冊子の作成・配布を一緒にしてくれた学生もいます。研究・活動で私が大切にしているのは、数字でとらえきれない個人や小集団の声に耳を傾けること。日頃アンケート調査などの「量的研究」よりも、聴き取り調査などの「質的研究」を行い、人の死生に関する現象をとらえようとしています。上智大学(比較文化学士)、エジンバラ大学(社会人類学修士)、京都大学(人間・環境学博士)卒業後、関西看護医療大学講師、東京大学特任講師を経て、2011年に保健学科に着任。山崎 浩司 准教授 社会学も死生学も、多くの人が気づかないことや見たくないことを、直視させてくれる学問です。どんなに平等を目指してもそこに不平等は存在する。どんなに健康に気をつけても、人はいつか必ず死ぬ――こうした社会や人間に関する根本問題について、ハタと足を止めて考え、調べ、行動してみることで、私たちの現在がより鮮明に浮かび上がり、めざすべき未来が見えてくるのではないかと思います。 医療専門職として働く限り、人の生死にかかわる問題に直面します。また、今後ますます医療が求められる中、業務は多忙を極めます。社会学や死生学による学びは、将来、現場で直面する問題や自らの実践をふり返ることの重要性を思い出させてくれるはずです。老年看護学研究から広がる未来卒業後の未来像死別や看取りの困難に共感的で支援的な地域社会をつくるべく、さまざまな背景をもつ有志市民と語りあい、学びあい、協働する。学生と一緒に長野県内の緩和ケア病棟を訪問見学。有志市民・学生と一緒に作成・配布した死別体験者支援の冊子。看護学専攻成人・老年看護学領域血液透析受療中の高齢者の在宅継続および通院支援に関する研究 血液透析受療中の高齢者とその介護者は、自助努力で長年週2~3日の血液透析受療のための通院をしながら在宅で生活を送っています。しかし認知症の発症や身体機能の低下により、在宅介護や通院のための介護の負担が大きくなります。血液透析受療中の高齢者は、介護が必要な状態になった場合、在宅での生活を継続するために通院手段の確保が不可欠です。そこで私の研究は、血液透析受療中の高齢者の介護状態に応じた、高齢者とその介護者の通院の困難さと対処法、ニーズの実態を明らかにすることが目的です。さらに透析ケアに携わる医療従事者用のケア支援策を考えたいと思っています。 当該研究は、高齢者にもたらされる様々な病気や加齢変化を引き金とし、認知症高齢者、要介護状態にある高齢者の介護上の課題や高齢者の尊厳、ケアの質を考えるきっかけにもなり、意義深いと考えます。また透析ケアの発展にも貢献できます。 老年看護学は、将来の高齢社会を支える看護師を育成する上での基盤作りの学びの場になると思います。老年看護学研究から広がる未来卒業後の未来像富山医科薬科大学医学部看護学科卒業。金沢大学大学院医学系研究科臨床看護学講座修了。看護師・保健師免許。長野赤十字病院・信州大学医学部附属病院で看護師として勤務後、教員へ。松井 瞳 助教技術チェックと多職種連携透析ケア高齢者の尊厳を踏まえた看護ケアの実践

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