工学部研究紹介_2021_日本語版
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教授吉野正⼈研究から広がる未来卒業後の未来像吉野研究室では、流体や熱・物質の流れをコンピュータシミュレーションによって解明する研究に取り組んでいます。近年、効率の良い計算手法の開発とコンピュータのめざましい発達のおかげで、これまで調べることが難しかったミクロな世界の流れを精度よく解析することができるようになってきました。特に、『格子ボルツマン法』というパワフルな計算手法を用いて、微小液滴が衝突する際の挙動や小さな空隙をもつ物体内の熱流動現象など、主に『マイクロフルイディクス』(微小スケールの流体力学)の研究を行っています。シミュレーションで用いる計算機プログラムを学生が自作で構築しています。将来的には、得られた研究成果を集大成し、混相流のような複雑な熱流動現象を解明するためのソフトウエアの開発・製作を目標としています。自動車関連産業への就職が多く、家電メーカや重工、工作機械や精密機器を扱う企業などにも卒業生を輩出。自分の専門分野にとどまらず、新しい領域の課題解決に意欲的な研究者・技術者として様々な分野で活躍しています。【私の学問へのきっかけ】高校生になって、それまで好きだった数学に加えて化学に興味を持ち、大学では化学工学科に入学しました。その中で今の研究分野に出会い、現在は機械システム工学科に所属しています。進学する大学の学科を選ぶ際、何となく面白そうだからという理由でもいいと思います。実際に入学すると、学科の名前からは想像できない楽しい分野が数多くあることに気づくでしょう。また、学生時代の私の先生は、学問の厳しさはもちろん面白さも教えてくれました。一つ一つの出会いを大切にして、いろいろなことに面白いと興味を持つことが重要だと感じています。機械システム⼯学科京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。2000年信州大学に着任。助手、講師、准教授を経て2012年より現職。格子ボルツマン法を中心とした混相流などの数値流体力学に関する教育・研究に従事。ミクロな世界の熱や流体の流れが『コンピュータシミュレーション』によって⾒えてくる︕※Sai+スペシャルNo.365より引用SBC信越放送「YES!ものづくりすごいぞ!信大工学部」で放映された研究室紹介:シミュレーション結果を見ながら研究室で議論している様子(左下図)、卒業研究に取り組んでいる風景(右下図)(URL:http://saiplus.jp/special/2016/03/365.php)液液二相のスラグ流解析(左上図)、狭窄部を通過する赤血球の変形の様子(左下図)、血管分岐部まわりの血流解析(右図)研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績研究キーワード•コンクリート溶脱解析の高度化(民間企業との共同研究)•鉱物繊維生成に関する研究(民間企業との共同研究)•流体解析を応用した統合型印刷機制御プログラムの開発(民間企業との共同研究)•積層造形の流れ解析に関する研究(民間企業との共同研究)•水素ステーションの低コスト化を実現するプレート式熱交換器の低圧拡散接合技術の開発(経済産業省戦略的基盤技術高度化支援事業)•格子ボルツマン法を用いたマイクロ流路内における粘弾性固体の挙動解析(科研費若手研究(B))•格子ボルツマン法による複雑構造の微小流路内に多数の粘弾性体を含む混相流解析(科研費基盤研究(C))•乱流混合と内部自由度のあるマイクロ粒子巨大集団との相互作用(学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点公募型共同研究(JHPCN))最近の研究トピックス•複雑な混相流問題に適用可能な格子ボルツマン法(LBM)の開発•マイクロポーラス内における移動現象解析•濡れ性を考慮した固体壁面上における液滴の挙動解析•雲粒子の成長過程におけるダイナミックシミュレーション•マイクロリアクタ内における混合・拡散現象の解析•熱移動を考慮した埋め込み境界-格子ボルツマン法(IB-LBM)によるアイススラリーの熱流動解析•分離・分級を目的とした分岐管内における固液二相流解析•脳血管分岐部付近に発生する動脈瘤まわりの血流解析数値流体⼒学・移動現象論・格⼦ボルツマン法・複雑混相流・マイクロフルイディクス・⽣体内の流れ空気中で固体壁に置かれた水滴に別の水滴が真上から衝突したときの挙動の時間変化。この衝突条件では、トーラスと呼ばれる特徴的な形状が再現されている水あめなどの高粘性液体を平板上に落下させた時のシミュレーション結果:ある条件下では、液体はコイルを巻くようなbuckling(座屈)現象を示す93

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