工学部研究紹介_2021_日本語版
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研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績研究キーワード核融合・プラズマ・原⼦・分⼦・⽔素・ヘリウム・分光計測・RFプラズマ・衝突輻射モデル・中性粒⼦輸送コード主に核融合プラズマを対象として、水素原子・水素分子の反応、空間的な流れ、粒子バランス・エネルギーバランスを理解することを目的として、下記のような詳細な計算機コードの開発を進めています。(a)水素原子衝突輻射モデル・衝突輻射モデルは、電子衝突・自然放出などによる励起原子の生成・消滅のバランスを記述する連立微分方程式。・様々な状態の励起原子の密度(ポピュレーション)が計算され、同時に、自然放出による発光強度や励起状態を経由する過程を含む電離・再結合等の実効的反応速度係数が計算できる。(b)水素分子衝突輻射モデル・主量子数(融合原子)が4以下の電子状態を区別し、さらにそれらの振動状態・回転が区別されている。・精密に準位を扱ったことにより、電子温度・密度を与えると分子発光スペクトルを計算することができる。(c)水素原子・分子中性粒子輸送コード・反応までの飛行距離、反応の種類、反応後の飛行方向等に乱数を用いて粒子を追跡し、各種粒子の密度・流れを計算する。・核融合プラズマにおいて重要とされる分子活性再結合など、反応が網羅されている。・原子・分子の励起状態を経由する過程を含む各種反応の速度係数(衝突輻射モデルで計算)が組み込まれている。・分子活性再結合など初期振動・回転状態により反応速度係数が大きく変わるものがあるため、中性粒子輸送コード中では、異なる振動・回転状態の水素分子を独立な粒子として追跡している。・各種の分子反応により生成される原子の速度分布が精密に考慮されている。・水素原子ライマン発光線の輻射輸送が精密に扱われている。プラズマ中の光の放射・吸収を考慮し、光強度の空間分布と励起原子ポピュレーションの空間分布を収束計算により同時に計算する。これらのモデルの検証のため、研究室のRFプラズマの分光計測をおこなっています。・電子温度・密度および分子振動・回転温度計測のための水素分子衝突輻射モデルの構築(科研費基盤研究(C)研究代表2009年度~2012年度)・水素原子・水素分子の内部状態を精密に考慮した核融合周辺プラズマ解析コードの開発(科研費基盤研究(C)研究代表2013年度~2016年度)・水素分子の電子・振動・回転状態を区別した中性粒子輸送コードの構築とその検証(科研費基盤研究(C)研究代表2018年度~2022年度)など最近の研究トピックス上に記したように分子の内部状態を精密に考慮したコードの開発を進めています。教授澤⽥圭司研究から広がる未来卒業後の未来像核融合発電は、高温・高密度のプラズマ中の重水素と三重水素の核融合反応により発電を行うものです。三重水素は発電中にリチウムから作られます。長年の研究により、プラズマを閉じ込める容器の中心部では核融合発電が可能となる1億度以上のプラズマが生成されていますが、プラズマとの接触による容器の損耗が最後の重要課題となっています。私たちの研究室では、容器を守る役割を果たす容器付近の原子・分子とプラズマとの反応について研究を行っています。重水素とリチウムがほぼ無尽蔵にあることや炉の安全性が核融合発電の特徴です。核融合発電が実現すれば、エネルギー資源の問題がなくなります。多くの人の就職先は、自動車メーカなど、機械システム工学科の一般的な就職先と同じです。核融合科学研究所等で、大学院生としてプラズマ研究を続ける人もいます。京都大学大学院工学研究科博士課程にて博士(工学)を取得後、1994年から信州大学工学部に勤務。現在の研究テーマは修士学生のときから。専門はプラズマ分光学。核融合発電の実現へプラズマ中の原⼦・分⼦反応の解明【私の学問へのきっかけ】大学の学部時代は野球ばかりして学問をわすれていたのですが、高校生になった頃にブルーバックスのしおりで見たニュートンの言葉「私たちは浜辺で、より美しい貝殻や、より滑らかな小石をあちこちさがし求めている子児のようなものである。未知の真理の大海は眼前にはてしなくひろがっている」などから、潜在的にはずっと研究者になりたかったのだと思います。いま研究職についているのは修士・博士課程でご指導いただいた先生の力量(マジック)のおかげです。機械システム⼯学科核融合発電実証を目指した国際熱核融合炉ITERがフランスで建設されています(日本・EU・ロシア・米国・韓国・中国・インドが参加)。設計には、澤田研究室で開発された計算機コードも利用されたhttp://www.iter.org/gallery/com_image_downloadThe ITER Organization provides images and videos on its public website free of charge for educational and institutional use..核融合プラズマを想定して開発したシミュレーションコードを、研究室のRFプラズマ(右写真)で観測される原子・分子発光線の解析に適用し、計算機コードの信頼性を検証している86

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