工学部研究紹介_2021_日本語版
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最近出版された学術論文国際研究集会でも評価を受けた数学のセミナーの様子。写真は中国の浙江大学に研究滞在した際の研究発表助教福田一貴研究から広がる未来卒業後の未来像福田研究室では、非線形偏微分方程式を理論的な側面から研究しています。その中でも主に、非線形波動及びそれに関連する問題に現れる微分方程式の数学解析を行っています。特に、時間の経過に伴い波の形がどう変わるかに興味があり、解の長時間挙動の解析を扱っています。一方で、周辺分野にも広く目を向けて研究しています。自然現象はその多くが非線形であるため、一つ一つを個別に調べる必要がありますが、異なる現象であっても方程式という数学的立場で考えると共通する性質も多く、微分方程式の学習を通して個別の現象という立場を超えた俯瞰的な理解が得られるのも、この分野の魅力の一つです。微分方程式は自然現象を記述する数理モデルとして、流体力学や振動・波動をはじめとする物理や工学の様々な分野に登場し、その応用範囲も多岐に渡ります。微分方程式の数学的研究を通して、実験からは得られない新しい知見が得られます。本年度着任したばかりですので、まだ卒業生はおりませんが、本研究室では数学的思考を生かして、幅広い分野で活躍できる人材の育成を目指します。特に、自身の専門の周辺分野にも興味を持って幅広く勉強し、多角的な視点から工学を見渡せる俯瞰力を養います。新潟大学教育学部を卒業後、北海道大学大学院理学院にて博士の学位を取得し、2020年より現職。専門は非線形偏微分方程式論。特に非線形波動に関連する方程式に興味があり、解の長時間挙動の解析に力を入れて研究を行っている。⾮線形偏微分⽅程式〜数学で読み解く⾃然の理〜【私の学問へのきっかけ】私は高校時代、数学教師を目指して大学の教育学部に進学しました。しかし、大学の数学を勉強しているうちに、高校数学とは違った、より抽象的・理論的な数学の世界に魅了され、もっと深く学びたいと考えるようになり、本格的に数学を勉強するため、当時の指導教員の勧めもあり、北大の大学院の数学専攻に進学しました。研究を続けていくうちに、次第に大学院の数年間では短いと感じるようになり、数学者への道を志しました。研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績研究キーワード⾮線形偏微分⽅程式・⾮線形波動・解の⻑時間漸近挙動•一般化KdV-Burgers方程式の解の漸近挙動に関する研究•緩和的双曲型保存則方程式系の解の漸近挙動に関する研究•時間遅れを考慮した微分方程式系の安定性解析•分子モーターの集団運動の数理解析•日本学術振興会特別研究員奨励費分散効果を伴う粘性保存則に対する初期値問題の時間大域解の第2漸近形の構成•北海道大学物質化学フロンティアを開拓するAmbitious リーダー育成プログラム独創的な研究活動経費時間遅れを考慮した微分方程式系の安定性解析とその化学分野への応用•北海道大学物質化学フロンティアを開拓するAmbitious リーダー育成プログラム先端共同研究経費Zakharov-Kuznetsov-Burgers方程式の解の漸近挙動に関する考察最近の研究トピックス•最近では移流・分散・散逸の三つの効果を持つ非線形波動の数理モデルに対して、その分散効果が非局所的な畳み込み積分で与えられる場合の解の長時間漸近挙動の解析を行っている。•北海道大学大学院に在学中、博士課程教育リーディングプログラム「物質化学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム」を修了しており、数学の研究に留まらない幅広い分野に関心を持っている。⼯学基礎部⾨125

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