- 29 - には,教科につながる学びの芽を数多く捉えることができることに幼小中全職員が気付くことができ,幼稚園児の遊びを捉える新たな視点が得られる機会となった。 今年度から算数数学教育を専門とする大学教授が指導に入ることにより,四歳児の研究保育で算数の学びにつながる姿(牛乳パックを複数つなげ,自分や担任の背の高さと比べる姿)に焦点があたり,幼稚園の教師が教科の学びにつながる芽をどう捉えていくのかを知ることができた。これにより,様々な遊びについても,学びの萌芽をとらえる視点でみつめることができるようになってきている。 9月からの研究保育の研究会において,附属学校園で育成しようとしている資質・能力(課題探求力・自己表現力・社会参画力)を視点として,子どもの育ちをとらえてきた。これにより,自分のやりたいことに向かって試したり,繰り返したりする姿や,自分のできたことを,「こんなことできたよ。」と保育者や友だちに見せたり伝えたりする姿など,課題探求力や自己表現力の素地になるような姿を多くとらえることができた。 (3)研究開発に取り組んで感じた教師の感想 ①子ども観や指導観の共有に関わる教師の感想 ・幼小中全職員に自分の授業実践の記録ビデオを見てもらう場をいただいた。その場にあたり,実践を省察すると,改めて授業当時には気付けなかったことや新たな見方ができていい機会となった。(中学校教師) ・幼小中各校園におけるこれまでの研究と,幼小中一貫教育としての研究のすり合わせをどのように進めていったらいいか。(幼稚園教師) ・小学校の先生がビデオを見て,「小学校の頃の姿がやはり,中学になり成長とともに花が開いている感じがする」と話していた。一人の子を長期にわたり見ていくということも,幼小中のつながりでできる部分ではないか。(中学校教師) ②資質・能力の系統性に関わる教師の感想 ・縦(系統性)と横(教科・領域間)のつながりが分かりやすくなってきたと感じました。(幼稚園教師) ・総合的な学習の時間で育成する資質・能力は,どの教科にも一致できるようにも思える。各教科・領域において,教科の本質・教科の哲学としての見方や考え方を踏まえた上で,本校園で育む資質・能力を明確にしていく必要がある。(小学校教師,中学校教師) ・どの教科・領域においても共通する部分と,各教科領域における独自のものがあるように思います。各教科等における見方や考え方を併せて,整理していく必要がある。(小学校教師) ・資質・能力一覧表については,新設教科・領域と既存の教科・領域との関連を明確にした上で,随時改訂していく必要がある。(幼稚園教師,小学校教師,中学校教師) ・幼稚園の保育や中学校の授業の記録ビデオを職員が一堂に会して見て,そして課題探究力・自己表現力・社会参画力の視点から語り合ったことで,幼小中12年間の系統性(内容の系統性ではなく,資質・能力の系統性)に目を向けられるようになった。(小学校教師) ・これからの激動の社会を生きる子どもたちにとって,課題探究力・自己表現力・社会参画力が全ての教科・領域の中で育成できるようにしていきたい。(中学校教師) ・社会参画力については,実社会とのつながりなくして育てることはできない。その意味で総合的な学習の時間は,まさに核となるのだろうと思いました。(中学校教師) ③研究開発学校推進全般についての教師の感想 ・「学びの総合化」に向けて,まずは中学生や小学生がどっぷり総合的な学習の時間に打ち込めるようにしたい。その場の確保が必要である。そうして打ち込む実践をした上で,省察に力を入れたい。(中学校教師) ・「開発しなければ…」という気持ちが先行しすぎると,目の前の子どもが見えにくくなる危険性もある。(中学校教師) ・本校園の研究開発の特徴の一つは,これまでの研究の底流である「子どもから活動が立ち上がる」ということだと言えるのではないか。内容ベースではなく資質・能力ベースで12年間の特別な教育課程を編成するが,常に
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