平成28年度 信州大学教育学部附属松本中学校 外2校(園)研究開発実施報告書(第1年次)
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- 27 - ・授業の実際 Yさんはこの単元が終了したところで,本校の学校目標である「地球市民」に寄せて,以下のように記述している。単元での学びを基に,自分自身の「地球市民」観を述べることができ,社会参画力の芽を見ることができる 「地球市民」として考えられること,できることは何だろう? 私は地球市民として,自分にできることは意識改革だと思います。前回の授業で蒲田君が,「自分がB社を選ばなくても,誰かがB社を選んで,原子力発電が続いていたら結局変わらない。」と言っていて,誰かがいなくならない限り変われないといっていましたが,それを理由にして,自分が原子力を歓迎するのは良くないと思うし,昨日の資料でも,時代が変われば考えが変わるということが書かれていて,それは時代の移り変わりによって,意識が変わったということだと思うので,1人1人の意識を変えることで,自分には少し損というか,値段の問題があっても,未来のためにはどうすれば良いのか,という意識をもつことが,地球市民としてできることだと思います。 「資源や環境をとるか,コストをとるか」,「今の自分の生活をとるか未来の自分や社会をとるか」といった葛藤をしていく中で,自分が調べてわかったことや自分の家の状況を基に自分の考えの根拠付けをし,さらに友の意見によって自分の考えを再構成しながら,自分なりに納得できる判断をする生徒の姿に出会うことができた。また,地球規模で今後のエネルギーについて考え,身近なところで自分にできることを考えようとする生徒の姿に出会うことができた。 このように,社会科と理科における見方や考え方を持ち寄りながら,教科横断的に課題に取り組む単元を設定することで,それぞれの教科単独では成し得ることのできないような学びや,ものごとに対する地球市民としての見方や考え方を育むことを今後も目指していきたい。 Ⅳ 実施の効果を検証する評価方法の検討 1 課題探究力・自己表現力・社会参画力に関する子どもの実態 全国学力・学習状況調査の結果から,課題探究力,自己表現力,社会参画力に関する児童・生徒の実態として,次の傾向と課題が特定されるとともに,教科横断的な学習及び総合的な学習における生徒の実態が明らかになった。 電気や石油に頼らない生活は難しいのではないか。 先生の家の1日の電力量を賄うのに,手回し発電機9台を3年間回し続けなければならない。 日本の電気はどのように作られているのだろう。 火力,水力,風力,原子力,太陽光,地熱, 各発電方法の長所と短所を整理しよう。 安定性と発電効率なら火力と原子力だ。 環境や資源面を考えると水力か太陽光。 安全でコストが低く,安定した供給と発電量が期待できる発電方法はないだろうか。 「家庭における電力小売の自由化」それぞれの家庭で電力会社を選ぶことができる。 火力発電のA社は,コストは低いが資源の有限性が心配。 再生可能エネルギーのC社は環境に優しいがコストがかかる。 未来の再生可能エネルギーへの投資を優先するか, 今の自分の家計を優先するか。 値段の問題があっても,未来のためにどうすれば良いのか考えるのが地球市民。私はC社を選びたい。

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