20 信州大学教育学部附属松本中学校 外2校(園) 28~31 平成28年度研究開発実施報告書(要約) 1 研究開発課題 本研究開発の目的は,持続可能な開発のための教育として,「たくましく心豊かな地球市民」を育むために,課題探究力,自己表現力,社会参画力を軸として資質・能力を実生活で有機的に活用する力を育成する,幼小中一貫教育としての教育課程/指導・評価を開発することである。 「たくましく心豊かな地球市民」とは,心身ともにたくましく,心豊かで国際的・地球的な視野をもち,かけがえのない生命と地球を守り,社会・人類の幸福に尽くすことができる人間である。「たくましく心豊かな地球市民」となるために,次の3つの生き方を実践し,人類共通の豊かな人間性を育てることを根本とする。 ・創造:自ら考え,つくり出そうとする生き方を育む人間 ・自主:自ら求め,そのことになりきる生き方に努める人間 ・愛他:自らを省み,他を思いやり,自他ともによりよく生きようとする人間 これらの生き方を実践するには,育成すべき様々な資質・能力を実生活で有機的に活用する力の育成が必要である。特に,「創造」の生き方は課題探究力を軸として実践され,「自主」の生き方は「自己表現力」を軸として実践され,「愛他」の生き方は社会参画力を軸として実践される。そこで,本研究では,課題探究力,自己表現力,社会参画力を軸として資質・能力を実生活で有機的に活用する力を育成する幼小中一貫教育の教育課程及び指導・評価を開発する。 信州大学教育学部附属幼稚園・松本小学校・松本中学校は総合的な学習に関する数多くの研究実績をもちながらも,各校園における取組の実現にとどまっており,幼小中を貫く視座から系統的な展開がなされているとは言い難い。本研究開発課題への取組により,幼小中一貫の包括的な教育課程の提案/ミッションの再定義に基づく附属学校園の機能強化が期待される。 2 研究の概要 幼小中12年間を通じて「たくましく心豊かな地球市民」を育成するには,実生活の諸課題に対し知識・技能/思考力等を総合的に活用できる力を培う長期的な教育課程が必要である。そこで,本研究は『学びの総合化』を枢軸として幼小中一貫教育を構築する。①中学校では,資質・能力を実生活で有機的に活用する力を育成するために,【教科等の総合化】を推進し,教科等の横断的な学習を充実する。②小学校では,資質・能力を身の回りで活用する力を育成するために,【学びの教科化】を推進し,高学年で理数・技術教育及び外国語教育の充実として教科「英語」と「技術」を新設し中学校との連続性を確保するとともに,学びの4領域「ことば/科学/暮らし/表現」を新設する。③幼稚園で【遊びの学び化】を推進し,小学校低学年で設置する各「学びの領域」の内容や方法を「遊びの視点」として,遊びのなかに学びの萌芽を見出し,幼稚園と小学校との連続性を保証する。 図1 本研究の全体像:『学びの総合化』 3 研究の目的と仮説等 (1)研究仮説 ①課題解決の手段 幼小中一貫教育の視座:『学びの総合化』 持続可能な開発のための教育として「たくましく心豊かな地球市民」の育成を就学前教育及び義務教育の両段階を通じ系統的に実現するために,遊びのなかに学びを顕在化すること【遊びの学び化】,学びを教科の学習として充実すること【学びの教科化】,教科の学習を実生活に総合的に活用すること【教科等の総合化】(以下,『学びの総合化』)を教育課程編成の枢軸として。なお,本研究で「学び」を「目標に向かって展開される意識的行動」と捉え,特に,【遊びの学び化】は,遊びを学びの萌芽形成として価値づけることを意味するものとする。 『学びの総合化』により,就学前教育及び義務教育の両段階を通して学びの連続性が高く,義務教育としての学びを全うする教育課程の編成が可能となるとともに,それに基づく有効な指導・評価の開発が可能となると期待できる。
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