平成28年度 信州大学教育学部附属松本中学校 外2校(園)研究開発実施報告書(第1年次)
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- 26 - ・単元展開 時間 学習活動 生徒の意識や姿(◎) 教師の支援(・) 問い 1 停電すると自分の生活や世の中の様子がどのように変わるのか考える。 ・文化祭での濱田学長の講演で,石油の有限性に不安をもった生徒の感想を取り上げ,「石油が少なくなると何が心配か」と問うことで,石油と電力確保のかかわりについて考えることができるようにする。 ◎石油が少なくなると,いろんなものが作れなくなるな。 ◎日本は石油を使って発電をしているから,電気が使えなくなる。 ・計画停電を報じる動画を提示し,「私たちにとって電気とはどのようなものか」と問うことで,電気が生活に不可欠なものだと再認識することができるようにする。 ◎真っ暗な中で生活するなんて考えられない。 ◎ 当たり前に使っているけど,改めて考えるとものすごく私たちの生活にとって重要なものだ。突然電気が使えなくなったらどうしよう。 2 3 基本的な発電のしくみや日常の電気使用量について調べる。 ・手回し発電機で実際に電気を起こす場を設定し,「1ヶ月の家庭の電力量を得るには,どのくらい回せばよいのだろう」と問うことで,発電のしくみについて理解し,安定して大量の電気を得ることの大変さを体感することができるようにする。 ◎ずっと回し続けないと発電は止まってしまうよ。電気をつくるって大変なことだ。 ◎1分間発電した電気で,電化製品はどのくらい動くのだろう。 ◎ 先生の家の1ヶ月分の電気を起こすには,24年間回し続けなければならない。 ◎私の家の電力量は1000kwhだ。この発電機では5Vしか出ていないから,この20倍の重さのものを回さなければいけない。大変すぎる。 ・附属松本中学校と松本キャンパスの電気代を提示し,自宅の電気代と比較したり,日本全体で使われる電気量を確認したりするよう促すことで,大量の電力をどのように手に入れているのか疑問をもつことができるようにする。 4 日本ではどのように発電を行っているか調べ,なぜ火力中心なのか考える。 ・「日本とおもな国の電源構成」,「各国の発電用エネルギーの割合」の資料を提示し,「どんな方法で発電されていますか」と尋ねることで,日本が多様な発電をしていることが分かり,火力発電中心の現状に疑問をもつことができるようにする。 ◎日本は他の国と比べても火力発電が中心だ。なぜ火力発電が中心なのだろう。 ◎各発電方法に長所や短所があり,火力が一番よいからじゃないかな。 ・各発電方法の長所や短所に着目し始めた生徒に,各発電方法にどのような長所や短所がありそうか話し合う場を設定することで,日本における各発電方法のしくみや問題点について調べるための視点をもつことができるようにする。 ◎発電所をつくる場所【立地】が限られたり,作れる電気の量【発電効率】が関係あったりするんじゃないかな。 ◎太陽光や風力は環境によさそう【環境への負荷】だし,エネルギー源は無限だけど【資源の有限性】,天気に左右されるよ【安定性】。 ◎火力発電はかかるお金が安いからじゃないかな。【発電コスト】 ◎原子力が減ったのは,福島の事故で放射能が問題になったからだ。【安全性】 ◎実際はどうなのかな。データなどを基に調べてみたい。 56 各発電方法の長所と短所を調べてまとめ,火力優位の理由について考える。 ・前時に出された視点を基に各発電の長所や短所を調べ,比較する場を設定することで,現在の日本では火力発電が優位である理由に気付くことができるようにする。 ◎発電コストは原子力発電が最も安いけど,福島の事故があったから,安全性をとると次に安い火力になるな。 ◎再生可能エネルギーはCO2の排出量は少ないけど,高いし,天候によって発電量が不安定だ。風力は前にやった手回しを安定して回さないといけないことになる。 ◎いろんな視点から考えると火力が中心になんだろうけど,火力に頼り続ければ資源も無くなるし,環境にも悪い。再生可能エネルギーが増えた方がいいんじゃないか 78 自分の家の電力をどこから買うか考える。 ・電力小売自由化について紹介し,数社の電力プランを提示してどの電力会社から購入するか考える場を設定することで,現在の日本のエネルギー事情や自分の生活とかかわらせて今後の電力のあり方について考えをもつことができるようにする。 ◎私の家は人数が多いから,少しでも電気代を減らしたいので,火力の会社がいい。 ◎太陽光を普及させるには,太陽光の割合が大きい会社から電気を買った方がいい。 ・「再生可能エネルギー中心の電力会社の取り組みや理念」と「電気会社変更による節約できる電気代」を提示し,両者の考え方についてどう思うか尋ねることで,自分とは違う考え方をもつ立場から自分の考えを問い直すことができるようにする。 ◎費用や安定性を考えて,火力中心の電力会社がいいと思ったけど,それではいつまでも日本の再生可能エネルギーが成長しないから,太陽光中心の会社にしよう。 ◎万が一の時のためにも,安定して供給してくれる火力発電がいい。もう少し再生可能エネルギーが発達したら,電気を再生可能エネルギーにしてもいいんだけどな。 9 これまでの学習を振り返し,自分には何ができそうか考える。 ・「これまでの学習を基に,附中の学校目標や濱田先生から提案について考えることはできないだろうか」と問うことで,電気やエネルギーの課題に対し自分がどのようにかかわったり,行動したりしていけるか考え,発表することできるようにする。 ◎地球で起きている問題を自分の問題として考えられるのが地球市民だと思う。まずは身近なところから電気を大切したり,お家の人とも話したりしてみたい。 ◎自分の身近にあることに対して自分がとる行動の選択のしかたが,未来の日本や地球につながっていくのだと思う。今まではあまり気にしていなかったけど,これからは電気やエネルギーにかかわる出来事やニュースなどに関心をもち続けて,自分が本当に電気を選べるようになったときはしっかりと考えて選んでいきたい。 私たちはどのように電気を手に入れているのだろうか。 社会科教師と理科教師のTT

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