- 13 - 5年 1m80円のリボンを2.3m買った時の代金を求める考え方を説明する場面 Cさん 子ども 子ども Aさん 子ども 教師 Yさん 教師 Yさん Aさん Yさん Aさん,2.3×10って,これ何をしているの? 整数にしてるよねえ。 楽だから? そうすると習っている計算になるから。 あっ,そっか。 これまでに習っている計算になっているよねえ。 整数にできるから,かける数に小数点がなくなるよ。 これ何mなんだろうね。 23m?かな。2.3mを10倍にした。 長いねえ,23mか…。 23m買って,10個に分けるってことだね。 どちらの事例も計算の手順を説明するだけでは式や計算が何を表しているのか,納得できなかった子どもたち。具体的な場面を用いだしたとき,つまり文脈の意味を考え始めたときに,ようやく式や計算の意味を理解した。小数の意味と比例に着目して「既習の数」と「既習の数の範囲での計算」に置き換えて統合的にとらえようとしていたものの,「計算の手順を説明する」だけでは不十分であった。 5年生の事例では,23m買ったときの代金をもとに,「リボンの長さが10倍になれば代金も10倍になる」「リボンの長さが1/10になれば,代金も1/10になる」という文脈を手がかりにすることで,「どんな量をどのようにもとにしたのか」が明確になり,ようやく「計算の仕方を考える」ことになったと言える。 計算の手順にとどまらず,自ら「どうして÷10するかってことがわかんない。」(Hさん),「2.3×10って,これ何をしているの?」(Cさん)と意味を問うた。これは,低学年のころから計算の仕方を考える場面で,文脈や日常の似たような別の場面に置き換えながら,計算の意味を考えることを積み重ねてきたからだ。新しく見出された性質や既有の概念を拡張し統合していく考え方が,ゆくゆくは自らの算数を創り発展させていくことになる。 上記HさんやCさんの背景には,従来より本校で大事にしてきた,子どもの意識に沿って柔軟に活動を広げていく教師の構えや文化がある。低学年において子どもの願いに応じて柔軟に拡張していく学びを積み重ねてきた子どもたちが,高学年算数科において算数的見方や考え方を獲得し,さらに中学校数学科で統合的に資質・能力を発揮していく可能性が,小学校新設「科学領域」や算数科にある。このHさん・Cさんのような姿を,新設「科学領域」や算数科で発揮する課題探究に関わる資質・能力の一つと捉える。 ③冷蔵庫の製作を通して,理科と技術科の学びを生かしながら自作冷蔵庫の理想の温度変化を追究していったYさん (中学校2学年「教科の総合化(理科・技術)」に関わって) ドライヤーの電熱線が赤くなる現象などから一般的には電化製品は電気を通すと熱を発するということを確かめた生徒たちが,同じ電化製品でも冷蔵庫やクーラーは電気を通したときには中が冷えるという現象に疑問をもち,冷蔵庫の仕組みに興味をもっていく姿を願い,単元「COOL LIFE~冷蔵庫のしくみからエネルギーを考える~」を構想した。 冷蔵庫を分解した結果,ペルチェ素子が冷却にかかわっていることを突き止めたYさん。ペルチェ素子に電気を流して冷え具合を確かめてみると,一度は温度が下がっていくが,すぐに上昇してしまうことに直面する。そこで,Yさんの問いは「どうすればペルチェ素子の温度を低いまま保つことができるのか」というように変容し,ペルチェ素子の周りに様々な工夫をして,ペルチェ素子の温度が下がる仕組みを探究していった。 Yさんの探究は単元が進むにつれて次のように変容していった。
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