平成28年度 信州大学教育学部附属松本中学校 外2校(園)研究開発実施報告書(第1年次)
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- 12 - ビニルテープの巻く場所や巻き数が少ないコマを見て,回す前に,「このコマはよく回らないよ。」と言っている姿から,今までコマを作ってきた経験もあり,どういうコマだったらぶれずに回るのか,わかっているような様子がうかがえる。自分の思う“ぶれずに回るコマ”を作りたいと考え,自分の巻きやすいように巻き方を工夫したり,ビニルテープを長く伸ばしてから巻いたり,すでに胴体に巻かれているビニルテープを剥いだりして,コマを作っていった。遊びの最後には,コマの回る様子を見て,「良くなってきた!」と言い笑顔でコマを回すことを繰り返し,自分の思う“ぶれずに回るコマ”に近付いてきたことを実感しているような様子もみられた。このことから,自分の作りたいものをイメージして,そのイメージに合うように試行錯誤していく姿を捉えた。 このT君のような姿を,幼稚園の遊びの中で発揮している課題探究に関わる資質・能力の一つと捉える。 ②計算手順の説明に終始せず,その意味を問い,自らの算数を拡張し統合していくHさん・Cさんの姿 (小学校低学年新設「科学領域」から分化する算数科に関わって) 高学年の2クラスにおける,小数のかけ算(4年生は小数×整数,5年生は整数×小数)の「計算の仕方を考える」場面での子どもの学びの姿を見つめてみた。子どもたちは,乗数や被乗数に小数が入ってくると,これまでの整数に関する乗法の概念を拡張させなければならない。そこで,何とかしてこれまでの既習「整数のかけ算」を生かして解決できないかと統合させようとする。どちらのクラスも考え方の説明は,小数の部分を10倍して後で10でわればいいといった「計算の手順を説明する」ことに終始していたが,Hさん・Cさんのつぶやきから授業の空気が変わった。 以下は,計算手順の説明をするだけでは腑に落ちなかった子どもが,その意味を問うていった時の授業記録の抜粋である。 4年 0.2Lの牛乳4本分で何Lになるのか考え方を説明する場面 教師: 子ども 子ども Hさん 子ども 教師 Hさん M君 どうして10倍したの? 0.2ってなると,考えにくかったから,整数に直したよ。 僕は付け足しで,整数に直して計算してから,かけ算で計算して, 10でかけたから,10で割って0.8。もどせば,答えは同じだから。 どうして÷10するかってことがわかんない。 0.2だとやりにくいと思うんだけど,そこに10をかけると整数になるから,整数にしてかけ算にして,10で割る。 0.2×10=2まではいい,Hさん?この後どういう式になるの? 2×4で8になるから,それを小数で表すと0.8になるってことかな。 (何となく÷10の意味が分からないまま授業が終わりになり,授業直後) 2って,この2Lペットボトルでしょ。2Lのペットボトルが4本で8L。でも本当は0.2Lの牛乳4本だから10で割って0.8Lじゃないの? コマ1がすぐに倒れるのを見ると,コマ1をかごに戻し,自分の作っているコマ2を保育者に見せながら,「このコマ,まだ回らないよ。」と言った。 テープ台からビニルテープを伸ばすと,両手で割り箸の端と端を持って,芯に巻いたり,右手で割り箸の端を持ち,左手で芯を押さえて巻いたりすることを繰り返しながら,伸ばしたビニルテープを巻き終えると,はさみで切った。 近くにいた保育者にコマ2を見せながら,「太ってきたけど,まだ強くない。」と言うと,テープ台からビニルテープを1m程伸ばし,芯にテープを付けてから,先程と同じように,両手を割り箸の端と端を持って巻いたり,片手で胴体を押さえて巻いたり,芯に巻いたビニルテープを剥いで巻き直したりしながらビニルテープを巻き終えると,はさみで切った。 床でコマ2を何度も回し,回る様子をじっと見た。すると,「外した方がいっか。」と言い,芯に巻いてあるビニルテープを30cm程剥がした。 そして床でコマ2を回し,回る様子を見ながら,「良くなってきた!」と言い,笑顔でコマを回すことを繰り返した。

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