平成28年度 信州大学教育学部附属松本中学校 外2校(園)研究開発実施報告書(第1年次)
24/48

- 11 - イ,同じ形(長方形)の箱を選び出している ウ,長さの見当をつけている。 エ,数や単位を書き込む。 オ,レジの形を過去に見たものからイメージしている。 引き出せる箱を選ぶ。 カ,試行錯誤しながら,箱を組み合わせレジの形を創りだしている。 キ,Hさんの役に立つことに喜びを感じている。 ク,Hさんと共に同じ目的に向かって活動していることに喜びを感じている。 Sさんの姿から,年中の子どもたちの中に,量や図形の感覚や,その規則性に関する気付き,目的に向かい最後まで自分のイメージするものを工夫して表そうとする力が育ってきていることを捉えることができる。そして,その背景として,5年間のSさん自身の生活経験やものや人に働きかける喜びがあり,それが原動力になっていると考えられる。 本校園の子どもたちに内在している生活経験やものや人とかかわることで育まれた喜びに根差した,上記ア~クにみられるような資質・能力をさらに膨らめ,育てていくこと,支えていくことが我々教師の役割である。そうすることで子どもにとって無理なく,本校園が目指す未来を切り拓いていく「たくましく心豊かな地球市民」を育んでいけると考えている。 ② 幼小中協働による取り組みを通して,校種間における相違点や共通点を認識した 「信州ラウンドテーブル」(平成28年10月15日開催)は,幼小中共催で初めて行われた。幼小中全ての職員が運営に共に当たる過程で,お互いの学校における公開研究会の運営方法を持ち寄った結果,その違いを知ることとなった。そして「違い」を共通認識することで,そこからより良い方策を見出そうと語り合い・協働する機会が生まれた。 平成27年末から平成29年2月までに,原則週に1回,計43回の「幼小中研究主任会」を開催することができた。研究主任及び副主任が集まることで,お互いの研究状況の共有にとどまらず,子どもの見方,大切にしている「子ども観」,「指導観」を知り合い,共有してきた。幼小中の研究体制が同じものを目指して進んでいこうとする土壌づくりが職員間で始まってきたことに意義があった。 3 本校園の子どもたちが共通して発揮する特長的な資質・能力の実態 上述のような幼小中の協働を通して,本校園の子どもたちが共通して発揮する特長的な資質・能力が見えてきた。追究したい対象に向かって自ら働きかけ続ける好奇心旺盛な姿。音楽集会などの行事や授業での言語活動や表現活動に代表される積極的に自らの考えを表現しようとする姿。学習したことを社会の中で生かそうとしたり,総合的な学習の時間などでの積極的に地域社会の人とかかわろうとしたりする姿。以下,代表的な姿を挙げる。 (1)課題探究に関わる資質・能力を発揮する子どもの姿 ①自分のつくりたいコマをイメージして,そのイメージに合うように試行錯誤していくTくんの姿 (幼稚園の遊びに関わって) 12月の遊びの中で,折り紙で作ったコマを使って,友だちと一緒にどちらが長く回るか競い合いながら回す姿が見られた。紙のコマよりも長く回るようなコマを自分で工夫しながら作ったり,作ったコマを使って,友だちと一緒にどちらが長く回るかを競い合ったりしていくことができるように,1月は,ビニルテープや短く切った割り箸などを用意し,コマを作ることのできる遊びの環境を構成した。 以下は,右の写真にあるような,短く切った割り箸に白のビニルテープを何重にも巻いた部分を芯としたコマを作っていた時の保育記録の抜粋である。 Tくんは,素材机に行き,短く切った割り箸を取ると,テープ台から,ビニルテープを50cm程伸ばした。 軸の端から5mm程の所にビニルテープを付け,両手で割り箸の端と端を持ち,巻く位置を少しずつ割り箸の中央にずらし,巻く量を増やしながら伸ばしたビニルテープを巻き終えると,はさみで切った。 素材机のかごの中に入っているコマの中から,ビニルテープの巻く場所が一定でなく,巻き数が少ないコマ1を持つと,「このコマはよく回らないよ。」と言った後に,コマ1を回した。 ビニルテープで作ったコマ

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る