- 10 - 形成された。 • これまで中学校で積み上げてきた総合的な学習の長所は,地域にある様々な「もの・ひと・こと」とつながることで,中学生が社会参画力や,地域に存在する課題を解決しようとする態度を育成していることである。これらについては今後も継続・発展していくことが肝要である。 • これまでの総合的な学習では,中学校で完結する傾向があった。今後は,幼小中一貫教育課程として,総合的な学習を通してどのような力を育むか,その最終学校段階である中学校における総合的な学習の特色は何であるべきかという視点から検討が必要である。 • 特に,中学校における【教科の総合化】を推進するため,教科横断的な力を総合的な学習にいかに活かしていくかについて検討をしていく必要がある。 2 本校園の特別の教育課程編成にあたっての基本的な考え方 (1)社会的要請と,信州教育や本校園が伝統的に大事にしてきた教育観 次期学習指導要領では,今後,情報化やグローバル化といった社会的変化が,我々の予測を超えて,加速度的に進展していく2030年頃の社会の在り方を見据え,予測できない変化に受け身で対処するのではなく,主体的に向き合い,関わり合う,「よりよい社会と幸福な人生の創り手」となる力を身に付けていくことの重要性を謳っている。20年後30年後の未来社会を考えたときに,自らの人生や未来社会を創り,切り拓いていく地球大の視野をもった人材の育成が欠かせない。 本校園では,この未来を切り拓いていく人間を,本校園の中学学校目標である「たくましく心豊かな地球市民」の姿と重なるものであるととらえた。しかし,本校園における一人ひとりの子どもの教育を考えたときに,一人の子どもを上記のような社会的要請に基づいた外的な動機による指導のみをもって,「たくましく心豊かな地球市民」としての永続的な心身両面での発達を得ることは難しいと考える。その子どもの中にある内在的で持続的な発達の方向を支えるものでなければ,一生涯にわたる永続的な効果は期待できないからだ。この主張は,信州教育や本校園が伝統的に大事にしてきた教育観に由来する。真に持続的な教育を可能にするものは,一人ひとりの子どもの中にこそあるということを再確認したい。 (2)校種を越えた「子ども観」・「指導観」の共有 ①幼小中全職員で園児の事例検討をし,子どもたちに内在する資質・能力を見始めた(6月 幼小中合同職員会) 本研究開発にあたり,本校園の子どもが共通して発揮する特長的な資質・能力を決めだす作業を行った。6月の幼小中合同職員会において私たち教師は,附属幼稚園の園児が遊ぶ様子の中に,子どもが発揮する「たくましく心豊かな地球市民」としての特長的な資質・能力を見出すことから始めた。幼稚園,小学校,中学校の職員が一堂に会し,幼稚園の保育のビデオを見ながら同じ観点で話し合った。 本校園にとって,この場を設定したこと自体が画期的であった。同じ保育を見ながら,それぞれの立場や専門の違いから多様な意見交流が行われた。 ビデオを見た後の事例研究会で,以下のようなSさんの姿が話し合われた。 ア,水を入れたペットボトルを持ち上げて重さを感じている。 附属幼稚園 年中Sさんの姿から【色水をジュースに見立ててお店屋さんごっこをしている場面(抜粋)】 テラスで色水作りをしているSさん。 ペットボトルに水を入れて,何度も持ち上げている。 Hさんの「何円かわからないから」という声で,「私はレジを作る」と言い,Hと共に 保育室に戻る。 Sさん,空き箱を組み合わせ始める。数ある箱の中から長方形のものを選び出している。 中がスライドし,引き出せる箱をみつける。 Hさんは,値札を作る。 Sさんは,長方形の箱を二つ組み合わせ,ガムテープで固定していく。その際に,一度ガムテープを適当な長さに引き出しておいて,箱にあててみてからガムテープを切る。 レジスターを作っている。
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