◆ 幼稚園での保育研修により,小学校職員に見えてきた効果 小学校全職員が幼稚園で保育研修(一日または半日)を行った。この研修を通じて,小学校職員の子どもの見方,接し方に変化が生まれている。 「年少さんの感性には到底追いつけない,感じられない私がいました。そして,何と言っても度々“寂しい”と感じてしまった私。いかに今,クラスの子たちを私の手の内に入れてしまっているのかを痛感しました。クラスの子たちの目はどうだろう。本当に子どもたちは興味があること,疑問に思うことに応える授業をしているのか。子どもたちの生まれもっている力,本能とでもいうのでしょうか,そこに段差を作らずに真っ直ぐ伸ばしてあげられようになりたいと思いました。」(小学校職員の感想より) ◆ 幼小中協働による効果 「信州ラウンドテーブル」(平成28年10月15日開催)は,幼小中共催で初めて行われた。幼小中全ての職員が運営に共に当たる過程で,お互いの学校における公開研究会の運営方法を持ち寄った結果,その違いを知ることとなった。そして「違い」を共通認識することで,そこからより良い方策を見出そうと語り合い・協働する機会が生まれた。 平成27年末から平成28年11月までに,週に1回,計33回の「幼小中研究主任会」をもつことができた。研究主任及び副主任が集まることで,お互いの研究状況の共有にとどまらず,子どもの見方,大切にしている「子ども観」,「指導観」を知り合い,共有してきた。幼小中の研究体制が同じものを目指して進んでいこうとする土壌づくりが職員間で始まってきたことに意義があった。 ◆ 幼稚園における教師への質的な効果 ・幼小中合同職員会において,幼小中全職員が附属幼稚園の子どもたちの遊びの姿をビデオで視聴した。視聴後,小グループに分かれ遊びの様子を話し合った。実際の遊びの姿を通して,幼稚園では「やりたいことにとことん向かっていく経験をたくさんしていく」ことが大切にされている点を幼小中全職員が知り合う機会となった。また,話し合っていく中で,遊び(お金を扱う場面・箱を垂直につなげる・紙を半分に折ってからはさみで切る場面等)には,教科につながる学びの芽を数多く捉えることができることに幼小中全職員が気付くことができ,幼稚園児の遊びを捉える新たな視点が得られる機会となった。 ・今年度から算数数学教育を専門とする大学教授が指導に入ることにより,四歳児の研究保育で算数の学びにつながる姿(牛乳パックを複数つなげ,自分や担任の背の高さと比べる姿)に焦点があたり,幼稚園の教師が教科の学びにつながる芽をどう捉えていくのかを知ることができた。これにより,様々な遊びについても,学びの萌芽をとらえる視点でみつめることができるようになってきている。 ・9月からの研究保育の研究会において,附属学校園で育成しようとしている資質・能力(課題探求力・自己表現力・社会参画力)を視点として,子どもの育ちをとらえてきた。これにより,自分のやりたいことに向かって試したり,繰り返したりする姿や,自分のできたことを,「こんなことできたよ。」と保育者や友だちに見せたり伝えたりする姿など,課題探求力や自己表現力の素地になるような姿を多くとらえることができた。 ③保護者への効果 保護者は,総合的な学習の時間の取り組みに対しては,活動そのものには十分理解を示してくれてはいたものの,教科等の学力を重視する傾向が強く,児童・生徒にとって今必要な学習であるという意識は低く,学習活動そのものの意味が十分に伝わっていなかったのではないかと分析している。しかしながら,生徒が総合的な学習の時間に打ち込む姿や地域の行事に参画していく姿を見守ることを通じて,保護者が児童・生徒の成長を感じ,総合的な学習の時間に対する認識も変わってきた。実際,児童・生徒と保護者が家庭で総合的な学習の時間のことを話題にする機会も増えたという声が聞かれるとともに,保護者も児童・生徒と共に行事に参画することで,保護者同士も互いの家庭の考え方や価値観を知り合うことができるようになったという声が寄せられている。 ④その他の効果 大学の中期目標・計画における附属学校園のミッションと実現可能な目標の明確化 信州大学の中期目標(15)の中期計画(15-2)において,次の事項が記載され,松本附属学校園に対する大学からの理解と支援が受けやすくなってきている。 平成28年度計画を実施した内容 「幼小中で一貫したカリキュラムの実現に向け,松本地区附属学校園間の連携を強化するために,幼小中一貫教育推進委員会が設置され,定例で開催されている」 平成29年度計画を実施した」といえる状態にするための取組事項
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