平成28年度 信州大学教育学部附属松本中学校 外2校(園)研究開発実施報告書(第1年次)
11/48

• 幼稚園における【遊びの学び化】に関するアンケート調査(実施時期,対象,評価方法は第三年次と同様) • 小学校低学年における「学びの領域」新設に関するアンケート調査(実施時期,対象,評価方法は第三年次と同様) • 小学校高学年における新教科の設置に関するアンケート調査 • 「思考力・判断力・表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」及び「プログラミング的思考」に関する独自調査の実施及び調査結果に関する経年比較 5 研究開発の成果 (1)実施による効果 ①児童・生徒への効果 全国学力・学習状況調査の結果から,課題探究力,自己表現力,社会参画力に関する児童・生徒の実態として,次の傾向と課題が特定されるとともに,教科横断的な学習及び総合的な学習における生徒の実態が明らかになった。 ◆ 児童の実態 ・課題探究力に関わる項目(質問番号4,44,47等)において,全国平均よりも特に高い傾向が見られた。これは,本学校園で伝統的に大切にしてきている児童・生徒の中にある問いや願いから学習活動を立ち上げた教育を推進してきたこと,園児の中にある問いや願いを支えて遊びに打ち込める保育を推進してきたことによる効果であると考えられる。 ・自己表現力や社会参画力に関わる項目(質問番号29,59等)でも,全国平均よりも高い傾向にある。具体的には,国語では,読むことに係る活用の力が高まっている一方,書くことに係る活用については苦手意識をもっている。課題としては,教科のみならず,総合的な学習の時間などにおいても情報を整理して書くこと,統合して事象を見つめて表現していくことが明らかとなった。 ◆ 生徒の実態 ・B問題の結果と,質問紙調査における「地域との関わり」「社会に対する興味・関心」「総合的な学習の時間(項目36,37)」で全国平均より高い結果が見られた。これは,日々の授業(教科の総合化,総合的な学習の時間)において,地域や暮らしを取り上げる学習を積み重ねてきたことによると考えられる。 ・課題探究力,自己表現力,社会参画力に関して,「世界から見た日本の資源とエネルギー」における教科横断的な学習(2年)として,社会科教師と理科教師が協働で,発電の仕組みを学び,エネルギー問題をより身近に考えることができるための授業を開発・実践した。その結果,生徒達は,これからの電力のあり方や自分と電気・エネルギーとのかかわり方について,「資源や環境をとるか,コストをとるか」「今の自分の生活をとるか未来の自分や社会をとるか」等の葛藤を通じて,自分自身が調べて分かったことや自分の家の状況を基に自分の考えの根拠を明らかにし,さらに友人の意見によって自分の考えを再構成しながら,自分なりに納得できる判断をすることができた。さらに,地球規模で今後のエネルギーについて,身近なところで自分にできることを見いだしていこうとする生徒の姿が見られた。 ・課題探究力,自己表現力,社会参画力に関して,総合的な学習の時間「信州松本・浅間温泉まちおこC」(3年)において,生徒達は,地域の意識に関するアンケート調査の作成過程において,アンケートに答える側の気持ちを慮り,地域の方が何についてどのような結果を得たいのかについて検討することなどを通じて,相手の立場になって考えることができるようになった。また,生徒達は,教科で培った力を総動員して課題の解決を図っていた。例えば,浅間温泉PRのためにCM作りを考える場面では,音楽で学んだことを活かしてより印象に残るメロディについて追究したり,理科で学んだことを基に温泉の成分を調べたり,国語科で培ったプレゼンテーション力を発揮して,様々な場所で自分たちの学びを発表したりした。 ②教師への効果 ◆ 幼小中の全職員における,12年間を通じて育成すべき資質・能力の共有 本学校園では「逞しく心豊かな地球市民」(中学学校目標)に表現されている全人教育を目指している。その姿の具現に向け,本学校園の子どもの姿から,そこに向かう資質・能力を決めだすことによって,幼小中に共通する特徴的な姿として,追究したい対象に向かって自ら働きかけ続ける好奇心旺盛な姿,音楽集会などの行事や授業での言語活動や表現活動に代表される積極的に自らの考えを表現しようとする姿,学習したことを社会の中で生かそうとしたり,総合的な学習の時間などでの積極的に地域社会の人とかかわろうとしたりする姿が教師のなかに見えてきた。このことから,今ある本学校園のよさをさらに高め,「地球市民」を具現するために,未来社会を生きる子どもたちにとって大切な生きる力として「課題探究力」「自己表現力」「社会参画力」を設定した。

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る