人文学部_学部案内2021
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27From Professorsる, 印刷された本が書店で売り出されるということが初めて当たり前になった時代なんですね。そうすると, 情報の伝達速度も飛躍的に高まるし, 本の数も, 同じ内容の本が——印刷っていっても, 当時は木版, 手作りで, 一点一点は本当は微妙に違うんですけど——少なくとも「ほとんど同じ本」が百冊単位で世の中に出回るということが初めて起こった時代なんです。だから, 江戸時代以前とは文化的なものの考え方や情報のあり方がやっぱり根本的に違ってくる。そう考えると, 歴史学とか, 思想史なんかにも係わる非常に大きな部分にアプローチできる研究テーマじゃないかと思って。江戸時代文学の, 特に印刷出版されて世の中に広まった本を研究対象にしてずっと調査研究を続けているっていうところです。——江戸において, 出版って大きな変革だったとおもうのですけど, それがそこまで研究されていないっていう状態は今も変わらないのですか?——江戸時代と一口で言っても二百六十年以上, そのあとの明治時代にもダイレクトに続いて, それこそ現代にまで至るという意味で非常に重要なポイントにもなる時代で, 出版文化のあり方, 出版文化の江戸時代における意義, 江戸時代から明治の移行期への変遷っていうのは, 本当にここ二, 三十年で非常に盛んな研究テーマになっています。私としては, 1600年代から1700年代の半ばくらいの, 出版文化が生まれて, 発達してきて, 社会に定着する頃に最も興味があります。その辺りって言うのは, 明治に入って以降よりも資料的なものが少ない時代になるので, どんな風に研究していけばいいんだろうって, 研究の方法なんかも模索されているところではあるんですね。——高校と大学:大学生と高校生国語科とか文学研究とかいうと, 私は大学に入る前だと高校の授業なんかを想像したのですが, どういうところが違うのでしょうか?——先ほども少し触れたことではあるんですけど, 大学に入るまでは, 教科書に載っているあるテクストを, 指導者である先生の指示に従って, 自分で辞書を引いたりしながら内容を読んだり, 現代語訳をしたりして, それによって古典に触れるっていうか, そういう文化があるんだってことを自分で知ることそのものが, 非常に大きな学修テーマですね。ところが, 大学に入ると, 皆さんもゼミでやっているとおり, そうではない。そも̶速水̶速水

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