農学部研究紹介2020-2021
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31造林学研究室造林学研究室では、森林の持つ諸機能を適切に発揮させ、生態系サービス(=自然の恵み)を享受することを目的に、樹木の挙動や森林の動態を、立地条件との関係から長期的に調べています。森林生態系は巨大なバイオマス、複雑な空間構造、多様な生物の相互作用によって特徴付けられる生態系です。その振る舞いを科学的な観点から観測し、地球温暖化の影響や、間伐等の施業の影響を抽出することで、森林生態系のグローバルな役割を長期にわたって維持させ、より良い人間社会の構築に寄与させることを、私たちは目指しています。私たちは森林生態学の立場から、変動する地球環境のなかで、森林と人間との関わり方を考えるための研究を行っています。森林生態系を理解する研究や、森林生態系を制御する技術開発を通じて、循環型社会の創出に寄与できます。私たちがターゲットとしている中山間地域は小さな自治体ですが、それは科学的な研究成果を政策に反映させ易いアクティビティの高いフィールドともなっています。森林生態系をモニタリングする能力、樹木の種を同定する能力、樹木の生き方を理解する能力が身に付きます。これらの科学的能力は、公務員や環境コンサルタントの分野において森林計画の策定と実行に活用されます。城田徹央助教北海道大学博物館産官学連携研究院等を経て2009年4月より信州大学農学部。人工林生態系の生物多様性創出、生態系サービスの制御、その地域活用を目的とした『人の関わる森林生態学』に関心がある。『自然の恵み』を持続的に享受する~森林生態系と人間の営みの科学~人工林でも間伐により生物多様性を高められる。このような人工林は、より充実した生態系サービスを発揮できるが、コストも高い。山地帯から樹木限界までの植物分布は、20年前よりも標高50m上方にシフトしていた。森林は地球温暖化のセンサーになっている。研究から広がる未来卒業後の未来像森林・環境共生学コース農業工学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像農業工学研究室では、さまざまな地表面に出入りする熱エネルギーの形態を明らかにして、よりよい農村空間を創出するための研究を行っています。地表面を出入りする放射や熱エネルギーは、農地では蒸散や土壌水分消費、橋梁路面では路面凍結、人工芝のピッチやアスファルト面などでは、暑熱環境などを形成します。最新の観測機器を多数備え、精度の高い観測を行うと同時に、温度の観測値は研究室で継承された基準温度計を使用して校正され、古いデータでも正確に比較ができます。環境の形成要因を明らかにすることで修復が必要な場合は対応策を技術として確立することを目指します。着任以来、トウモロコシ畑を試験地として、熱収支の特徴を検討しています。トウモロコシのような、背(草高)が高く葉の面積(葉面積)が大きい作物は,基準の蒸発散量を20%程度上回る蒸発散が確認できます。この形成機構を解明するため、緑被空間面積率(GSAi)を導入した蒸発散のモデリングに取り組んでいます。2016年までに、なぜ約20%多く蒸発散が生じるのかを明らかにしました。研究の成果によって、水の効率的利用が求められる地域で、水資源を高度に利用した灌漑農業が可能になります。このほか、高地の紫外線、橋梁路面凍結、農地砂塵、暑熱環境などの様々な現象のメカニズムを解明することで、環境修復やリスク軽減などの学術的、技術的な提案が可能になります。研究室のOB・OGは、幅広い分野で活躍しています。多くは行政技術者(公務員)、土木(橋梁)技術者、造園技術者です。海外の大学院に進学後、そのまま海外で活躍する林業技術者(インドネシア)や国連職員(イタリア)もいます。また、工業高等専門学校や高等学校で教育に従事する者もいます。鈴木純准教授博士(農学)、修習技術者(農業)。長野県技術吏員(農業土木)を経て、1996年信州大学に着任。さまざまな地表面の放射や熱エネルギーの振る舞いについて、気象学や土壌物理学を応用した研究を行っている。さまざまな地表面に出入りする熱エネルギーの形態を明らかにして、よりよい農村空間を創出します農地から発生する砂塵の発生メカニズムを明らかにして、その抑制技術を開発する精度の高い観測によってデータを取得する森林・環境共生学コース

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