農学部研究紹介2020-2021
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28緑地生態学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像大窪久美子教授千葉県立中央博物館学芸研究員を経て1997年4月より信州大学農学部に着任。造園学における緑地や景観の保全、計画に関する研究を行っている。具体的には希少植物の保全や外来植物への対応等の基礎的、応用的研究をすすめている。(写真一枚or複数枚組み合わせ)研究対象地の一つである霧ケ峰高原:貴重な半自然草原群落緑地生態学とは、都市緑地のみならず、農村緑地、自然緑地をも対象とし、生態学的視点から地域管理計画を検討、策定していく学問領域です。緑地生態学研究室は1997年にできた比較的新しい研究室です。すばらしいフィールドが身近にある立地を生かし、実際には二次的自然や原生自然を対象とした保全的研究が多く行われています。外来生物の侵入と定着は、生物多様性の低下や在来生態系へ負の影響をもたらしており、国際的な問題となっています。本研究室では貴重な自然環境に定着している外来植物の現状を把握し、在来植物や在来生態系への影響を評価する研究を行っています。例えば、特定外来植物に指定されているキク科のオオキンケイギクは河原や堤防草地に定着しており、在来植物へ負の影響を与えていることが示唆されました。また、外来種のフサフジウツギは在来同属種と送粉関係で競合関係にあることがわかってきています。霧ヶ峰高原では県の外来植物駆除事業に参画し、具体的な取り組みに協働しています。緑地や景観の保全、管理を自然と人との関係性から探求する絶滅が心配される水生植物群落の自生地への巡検卒業生や修了生は環境、造園や林業関係の専門職として地方公共団体や国の公務員になっている方が多いです。また、民間企業では環境コンサルや食品関係等、幅広い進路をとられています。森林・環境共生学コース造林学研究室では、森林の持つ諸機能を適切に発揮させ、生態系サービス(=自然の恵み)を享受することを目的に、樹木の挙動や森林の動態を、立地条件との関係から長期的に調べています。森林生態系は巨大なバイオマス、複雑な空間構造、多様な生物の相互作用によって特徴付けられる生態系です。その振る舞いを科学的な観点から観測し、地球温暖化の影響や、間伐等の施業の影響を抽出することで、森林生態系のグローバルな役割を長期にわたって維持させ、より良い人間社会の構築に寄与させることを目指しています。本研究室は森林生態学の立場から、変動する地球環境のなかで、森林と人間との関わり方を考えるための研究を行っています。森林生態系を理解する研究や、森林生態系を制御する技術開発を通じて、循環型社会の創出に寄与できます。ターゲットとしている中山間地域は小さな自治体ですが、それは科学的な研究成果を政策に反映させ易いアクティビティの高いフィールドともなっています。森林生態系をモニタリングする能力、樹木の種を同定する能力、樹木の生き方を理解する能力が身に付きます。これらの科学的能力は、公務員や環境コンサルタントの分野において森林計画の策定と実行に活用されます。岡野哲郎教授九州大学農学部附属演習林(本部、北海道演習林)を経て2004年1月より信州大学農学部。広葉樹天然林の長期動態や、攪乱後の森林再生プロセスの解明と技術構築に関心がある。木質エネルギー利用にも関わっている。『自然の恵み』を持続的に享受する~森林生態系と人間の営みの科学~強風で倒された樹木の周囲は明るくなり、そこでは後継樹が発生し成長すると言われるが・・・?長期にわたるモニタリングで解明する木曽の天然ヒノキ林を再生させるための技術開発。密生するササをどう制御するか-ヒノキ実生の発生を促すための重要な技術であるササで覆われ、ヒノキはごくわずかササを制御し、ヒノキ林が再生した造林学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像森林・環境共生学コース

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