農学部研究紹介2020-2021
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23主にイネ、ダイズ、ソバについて、収量と品質の向上のための栽培技術の改良や開発を行っています。品種改良がAKB48の新メンバーとすれば、栽培技術の研究は秋元康、つまりプロデューサーに相当し、タレント(品種)がもつ魅力(能力)を理解し、引き出して人気(収量・品質)を高める、どんなキャラのタレントが売れるのか(どんな特性を持った品種が必要なのか)提案するといった役割を果たします。現在、倒れやすく栽培しにくい稲品種の栽培法改良、ダイズ栽培における有機肥料の合理的利用、過湿条件でも発芽良好なダイズ品種の選抜法開発、ソバ植物体温測定による土壌水分管理の最適化などのテーマで研究しています。世界の人口増加に見合う食料増産が必要ですが、持続的生産のためには石油やリン鉱石(リン酸肥料の原料)等の有限資源の使用削減が必須です。また、不良環境での生産向上も必須です。今の時代の人だけでなく、未来の人も食べていけるような農業への変革が求められています。未来のあるべき農業は生態系と生物機能をより巧みに利用した高度な資源循環システムでしょう。このようなシステムに一歩でも近づいていくため、有機肥料、土壌の乾燥や過湿といった栽培条件での土と作物との相互作用に注目して作物生産の向上・安定を目指しています。生産現場を支援する都道府県農業改良普及センター職員やJA職員として活躍できます。また、国家・地方公務員の行政職や技術職の立場で農産業の発展に貢献することもできます。種苗や農業関連資材・機材の生産販売を行う企業、食品メーカーでも卒業生が多く活躍しています。萩原素之教授石川県農業短期大学助手、信州大学農学部助手、同助教授を経て、2003年11月から現職。食料生産の向上・安定のため、低投入条件や不良環境下での作物の生育と収量の改善策を探る。品種(遺伝子)だけで勝負は決まらない作物の才能を発揮させるproducer:作物学実験風景:光合成速度・蒸散速度の測定,作物が吸収した窒素の定量,植物体温測定による水の過不足の評価,発芽時に種子から溶出する物質と発芽の良否の関係の調査,などを行う電子顕微鏡レベルから生産現場まで大学内での研究だけでなく,現場に出かけることも(農家水田でのイネの収量調査の合間に「農魂」にふれる)過湿条件でもよく発芽するダイズ品種を探す希少なモチ米品種「白毛もち」の栽培実験ダイズ種子の電子顕微鏡観察サーモカメラによるソバの水ストレス評価作物学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像植物資源科学コース)青果物機能学研究室果物や野菜は、収穫された後も生き続けています。どのように取り扱うかによって、生命活動が変わり、栄養価や有用成分も変化します。濵渦研究室では、地域の青果物(特にカリンやマルメロなど)を材料に、どのような有用成分を含むか、どのように保存や加工をすればその特徴や有用成分を活かせるかを研究しています。また、野菜は自家菜園で栽培・収穫・利用することが最高の品質を味わえる究極の贅沢です。安全・安心と環境共生を実現できる自然農法を取り入れた自給菜園でいかに品質のよい生産物ができるか、についても研究が始まっています。果物・野菜は人にとって最も身近な生き物かつ食品であるといえます。彼らの生物的特徴や食品機能の特徴をよく知ることは、これからの私たちの健康的食生活を考える上で極めて重要です。現代社会は、人の健康に有益な食品開発と同時に、生物多様性保全などの環境共生が重要な課題となっています。サプリメントとは異なり、食卓を彩る機能もある果物・野菜を彼らの能力を活かした形で栽培・利用する研究は、人と環境にやさしい持続的社会の構築に寄与できるでしょう。卒業生は、果物・野菜を扱う流通業や、ジャム・ジュースなどを扱う青果物加工業をはじめ、その他の食品製造業に多数就職しています。また研究者派遣の業界に入り、企業の研究チームに参画して活躍している人もいます。濵渦康範准教授大阪府立大学大学院農学研究科博士後期課程修了、1996年より信州大学農学部勤務。専門は園芸食品利用学。青果品質保全学、食料機能解析学などを担当。抗酸化成分の変動を主に研究。自然菜園方式による自給野菜生産と品質の調査を実施(左)薬用果実(カリンなど)の有用成分を活かした加工も研究(右)各品目に特徴的な機能性成分の調査とともに、おいしさなどの品質にかかわる成分の貯蔵・加工に伴う変化を追究している果物・野菜を知り、活かす。品質と有効利用の科学研究から広がる未来卒業後の未来像植物資源科学コース

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