農学部研究紹介2020-2021
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22鈴木香奈子助教国際農林水産業研究センター、国際熱帯農業研究所を経て2019年4月より信州大学農学部。サハラ砂漠以南のアフリカ諸国の土壌肥沃度改善や作物収量向上に取り組んできたことを糧として、高冷地作物の栽培研究に取り組む。キャベツの健全な根(左)と根瘤病に著しく感染した根(右). これが減収を招く.高冷地生物生産管理学研究室では、緑肥作物としてソルガム、ヘアリーベッチといったイネ科とマメ科の異なる作物を用いて、高冷地地域の代表的な園芸作物の一つであるキャベツの根瘤病の防止対策ならびに土壌の肥沃度、化学性、物理性、生物性の改善手法を見出していきたいと思っています。この研究の成果は、薬剤を用いた土壌消毒や外部からの多量な肥料投入を軽減させ、環境への負荷を減少させる栽培手法の構築に大きく寄与すると考えています。また、持続的に安全な食物を消費者へ届けるために取り組むべき重要な課題であると考えています。高冷地地域における園芸作物は重要な換金作物であり、安全な作物を消費者へ持続的に届けることが重要です。しかし、根瘤病によって深刻な被害が生じています。病原菌を除去するために薬剤を用いた土壌消毒が採用されていますが、この使用頻度を減少させる環境保全型の栽培手法を確立できれば、より安全な食物を食卓へ届けることができるはずです。また、生産者にとってもコスト削減につながる有効な手法になると考えています。作物の栽培やそれを育む基盤の重要性について学ぶことを通して、農業の労働生産性の向上や食糧の安全保障の問題などについて取り組んでいける人材を育みたいと考えています。また、地元長野をはじめとする日本国内や海外の困窮している国々など、様々な地域における農業発展へ寄与できる人材を育みたいと思っています。緑肥活用による高冷地野菜の環境保全型栽培手法の構築の可能性を追求する高冷地生物生産管理学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像緑肥と化学肥料の組み合わせ施用下(左)と化学肥料のみの連作下(右)のキャベツの結球状態.上は5月下旬に播種、下は6月中旬に播種したもの. 緑肥を併用した方が結球状態は良好で根瘤病による被害が減少する.植物遺伝育種学研究室根本和洋助教1998年より信州大学農学部勤務。2002年から10ヶ月、オランダ・ワーゲニンゲン大学客員研究員。植物遺伝資源の保全・評価・開発研究や民族植物学的調査研究に関心がある。海外での調査研究も数多く行っている。(写真一枚or複数枚組み合わせ)現在、研究しているアマランサスの花序(左)と種子(右)。種子中には多くの栄養成分を含み、高い環境適応性をもつ。(写真一枚or複数枚組み合わせ)ブルキナファソでの現地調査(左上)、ネパールでの試験圃場の様子(左下)、長野県下伊那郡に伝わる清内路あかね(右)低・未利用資源作物を遺伝的に改良し、在来作物資源を未来に向けて保全する私たちは、植物遺伝学、植物育種学、分子生物学といった学問分野をベースにして、育種学の理論と技術を応用して、作物の遺伝的改良に関する調査研究を進めています。社会のニーズに見合った育種目標を掲げ、世界の農業・食糧問題に貢献することを目指しています。また、国内はもとより海外での現地調査も積極的に実施しており、将来、海外の農業研究の現場で活躍できる人材の育成にも努めています。途上国における食糧・栄養問題を解決する、また、有用な機能性成分を多く含み私たちの食生活をさらに豊かにする、そのような可能性を秘めつつもあまり知られていない作物が世界にはまだたくさんあります。当研究室では、これらの低・未利用資源作物に光を当て、育種学的観点から遺伝的改良に取り組んでいます。同時に、急速に失われつつある在来作物資源を次世代に残すべく、保全遺伝学的アプローチによる研究を進めています。私たちは研究対象となる作物について、フィールドでの調査とラボでの分子生物学的手法による幅広い研究を展開しています。フィールドでの対象作物の栽培試験から、ラボでの遺伝解析や成分分析等、植物育種に関する幅広い調査研究を通じて、基礎的技術と応用の両方を習得します。卒業後は、種苗会社、食品関連企業、公務員研究職等で活躍できる人材になります。研究から広がる未来卒業後の未来像植物資源科学コース植物資源科学コース

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